キツネの三助2024
土曜日の20時更新です…
年が明けた。
ウサの後を追って故郷の伊吹山を出て丸ニ年。公園の植え込みで呑気に暮らしてたんやけど。
年末にいきなり生活水準上がったんよワシ。
何か、お稲荷さんの信者連中が勝手にねぐらに祠建てよってな。今そこで生活してます。
毎日お供えに来よるから食いモンには困れへんし。祠ん中に一畳位の部屋も作ってくれたんで雨風もしのげるしで。重宝してる。
別に神様になりたいとか思わんけどなフヘヘ。あ、ちなみに今日の義手は柄杓です。
コンコン。コンコン。
観音開きの扉をノックする音。
コンコンコココココココココココココココン。
誰か忙しないヤツが来た。タブレットで恋リア観とったのにィ。少しだけ扉開けて覗く。
「合言葉は〝不法占拠〟でいいと思う」
「いらんわ。デリケートなトコ衝いてくんな」
公園前の家で飼われとるリスがちょこんと立ってた。
「今日はカルトの教祖様に新年の挨拶に来ました」
「イヤ違うから。聞こえが悪いからヤメて」
「シマちゃんです」
「あ、シマちゃんな。新年おめっとさん」
シマちゃんはコマ落としみたいな首の動きで祠ん中をキョロキョロしとる。オモロ。
「まぁ、お上がり」
「この違法建築物の中あったかい」
「ハロゲンヒーター点いてんねん」
「電気泥棒?」
「知るか。信者さんの御厚意!」
コイツ、何かウサに似てきたなー。さすが師弟関係なだけあるわ。
「それでアニメ観れる?」
シマちゃんがタブレットに食い付く。
「おー観れる観れる。WiFi飛んでるからな」
「じゃシマちゃんはここで暮らせると思う」
しもたアアアアアアアアアアアッ!
このリス、何でか知らんけどワシと公園で暮らすコトに情熱燃やしとるんやった……確かアニメが観れんくて諦めてたんやな。忘れとったわ。
「遊びに来んのは構わんけど。ちゃんと家帰りや、飼い主さん心配するやろ?」
「シマちゃんに飼い主はいないと思う。小動物は生きてるだけでいい、って師匠が言ってた。それだけで住むトコとエサをくれる人間がいる」
うん、それが飼い主やんな。
「でもシマちゃんは余生を三助と過ごすと思う。自由にダラダラ生きる。窓からずっと見てた」
シマちゃんのぞき魔やからな。でもワシんトコ来たら余生ダラダラってお前フへへ。何見てそー思った?
あ。
扉の方から乾いた視線を感じて振り返る。
ウサが光沢のない目でジ〜ッとこっち見とった。この弟子にしてこの師匠アリやね。勝手に覗くなっちゅーねんワシの祠ライフ。
「キツネ教の悪の総本山てココ? 油揚げ一つ下さい」
ややこいのダブルで来られてもワシ。スペックオーバーでムリやねんけど。
「師匠。シマちゃんです」
「あけおめシマちゃん。今から僕ね、このゴブリンの巣窟をバクチクで攻撃する」
「やめろボケ、ゴブリンちゃうわ。ついでに狂った弟子連れて帰れウサ」
白うさぎは暫く部屋の小型冷蔵庫とか電子レンジとかウォーターサーバーなんかを品定めしとったけど。WiFiのホームルーター見た途端キレ出した。
「伊吹山の神様にチクるから三助。お稲荷様名乗って人間たぶらかしてギガ使い放題しやがってぇぇぇッ」
「え、そこ? イヤイヤイヤ待てってウサ。あの白猪アタオカやからマジ。また街壊すとか言いよるでアイツ」
「だからギガ使い放題を見逃せっての?」
WiFiってそんなに罪なんスかーッ、神様!
リスがささっと寄って来た。今同居の話はやめてぇ。
「ココを師匠とシマちゃんのアニメステーションにしたらいいと思う」
は?
「地上波で観れないヤツとか観れる。ワンダーランドだとシマちゃんは思う」
「いいね! 僕、こーゆートコ前にリンと行ったコトある。漫画喫茶だ!」
うん。ワシの家やけどなウサ。
「じゃ今日からココが僕らの秘密基地ね。シマちゃん、名前つけて」
「Dランド!」
「おけ。Dランドね!」
小動物どもがキャッキャ言いながらDコールしとる。外資敵に回したら怖いからな、お前ら。黒服のエージェントが来るでマジで。
とりあえずリスの余生を見んでも済んだけども。ワシの快適祠ライフは幕を閉じた。
また都会での一年が始まる。
それではまた…




