小学生女子のアイデンティティについて
土曜日の20時更新です…
見知らぬ、天井。だわね。
正確に言えば一昨日から知ってる個室の天井。病院の白いヤツね。
ツインテメガネの女子小学生。瀬良じゅりあコトせらは盲腸で入院中かしら。ちなみに今は髪を下ろしてる。だって、ずっとベットの上で点滴してるだけだもの。
盲腸を散らす。なかなかいい響きね。せらは軽症だったから手術なし、でも一週間位は入院するのだわ。
お気にのパープルのパジャマ。お勉強もするけれど基本ヒマでヒマでしょうがないから。スマホのキッズケータイで推しの写真を眺めてる。
せらはストーカーなのに……写真はみな推し達と一緒のショットばかりかしら。
フフ。この子達写真大好きだから。
ニヤけてたら病室のドアが十センチ位開いたの。
「こんにちはー」
え、嘘ヤダ。
小動物が一列に並んで入ってキタ!
ウサとトイプーのロッキー、それにエキショーのメタまで居るわね。
「あらあら」
三匹はベットの上によじ登って来て辺りをキョロキョロしてる。
メタの抱えてる緑色の小箱には『棒きなこ』の三文字。せらの視線に気づいたメタが箱からソレを一本取り出すと「ハイ」って。食事制限とかお構いナシね。
「ありがとメタ。アナタ達、お見舞いに来てくれたのかしら」
「あ、うん……じゅりあ先生」
何かやたらソワソワしてるメタとせらの推し達。
「ひょっとして。せらが重い病気だとか思ってる?」
「え? イヤ全然」
言い方ね、メタ。言い方。ウサとロッキーもうつ向いたまま顔見合わせてる。
「何か……ね。ロッキー」
「うん。だね、ウサくん」
「何? 言いたい事あるんならハッキリ言ってよくってよ。じゃないとせら、点滴抜いて死ぬから」
ゼンマイ仕掛けのお人形さんみたくワタワタし出す三匹。嫌いじゃないかしら、この動揺っぷり。
「あっ」
動物達がドアの方を見て一斉に固まったのだわ……せらには何も見えない。
コレってアレじゃない?
「お化け的なヤツ。見えるのかしらウサ」
「…………見えてない」
「遠慮しなくていいのだわ! 何か見えるんでしょ? ね、ロッキー?」
「イヤ……見えてないかな」
せらは歯がゆくなってメタに白目むいたわね。
「え、え、ボクわかんないよう……」
半泣きになって余計お顔がクシャてなってる。せらは入院中だけどお乳がピッて出そうになりました。
「よく聞いてアナタ達。せらの事想って黙ってるならノープロブレム。だってね、せらはお化けウエルカムの人なんだもの。キョーミある」
同じ部屋の中にお化けとせら。何か、ワクワクするのだわ!
「お化けかどーかわかんないよ。だって見えないんだもん」
「だね、ウサくん。見えないんだが。その、何かブツブツ言ってくるのは聞こえるかな」
「言ってるねロッキー。同じコトばっか繰り返し言ってくる!」
せらは思わず前のめり。お化けからのメッセ? ミステリアース&ロマンチーック!
「何て? ねぇ、何て言ってくんのかしら?」
「えとねー」
黒耳をひこひこ傾けて頷くウサ。
「一人称が名字はキチィー……だって」
「変な語尾付けんのヤメィ……もだね、ウサくん」
しーんてなる病室。
エアコンの音だけが鳴り響いてるわね。
メタが二本目の棒きなこを取り出してた。
「一人称て何?」って食い下がって来るウサを躱しながら。せらはメタが溢すきなこをティッシュで拭き拭きしてあげたのだわ。
ふぅぅぅぅ……
小学校の先生と同じ事、言う。
それではまた…




