大橋哲也のリアルその2
土曜日の20時更新です……
明らかに敵意を。生まれて初めての敵意を。
向けられています……小動物に。そして、それにビビって目を逸らしてしまった自分。
彼女には気付かれなかっただろうか。ダサい上にヘタレなこの姿を。
ボクは普段なら陥らない感情にどう対処していいかわからず、困惑しました。その結果、普段なら絶対に選ばないであろう選択をしたんです。
うさぎを……睨み返してみた!
少し震えたけれど。このうさぎと喧嘩してもいい! って考えると大丈夫になりました。
「そうか。喧嘩も普通に避けてきたけど。やってやるってなったら意外と平気なんだ」
ボクはうさぎをグーッと見ました。
向こうは「お? やんのか、やんのか?」とエキサイトしています。
やる、と決めたらもう全然怖くない。逆に向こうは何で「やんのか」と確認してくるのか、実に滑稽な感じです。
『今からボクは生まれて初めて喧嘩をする。格闘技は知識として入ってるから何とかなるだろう。まずはバラ手で目潰しだ。相手が怯んだところで金蹴り。後は殴る蹴る、自由な感じで』
チラホラいる乗客達もトラブルに気付いたようで、一斉に引いています。
「リン。やっちゃうから僕。アイツ殺す」
彼女、リンて言うのか……。本を膝上に置くと、目がバッキバキになったうさぎを覗き込むリンさん。
「喧嘩しちゃダメでしょ。ウサ」
鼻をひくひくさせながら訴えるウサ(?)
「だってアイツ! リンのコト……エロい目で見てた!」
このやり取りで気付く。
そして耳まで真っ赤っかになるボク。
あのうさぎは彼女のペットかな、とは思ってましたけど。主を守る為に戦おうとしていたとは……。つか、痴漢扱いを受けているんだがボクは、と情報が多過ぎてパニック。
『いや、違ッただ見てただけ……その、アレです。可愛いなって思っただけなんだ。それって罪でしょうか神様』
さっきまでの無双状態が解除されて、うつ向くばかりのボク。でも心の声はどこにも届かず。目を見開くばかりでした。
するとリンさんはウサの頭を優しく撫でながら、言い聞かせるように囁いたんです。
「私の為に喧嘩しないでウサ」
「だってアイツ、リンのコト。エロ……エロ」
嗚咽し出す小動物。
天使のように微笑む彼女。
「大丈夫だよ。視姦されるのは慣れてる」
視姦…………?
『視姦とは、相手を見つめる事で、辱めて性的興奮を煽る行為』
ピポーン!
思わずエア早押し。
それではまた……




