ある戦いの記録〜キツネの勇者と魔王うさぎ〜
土曜日の20時更新です……
ガブガブ、ってな。
ベンチでタバコのポイ捨てしたハゲリーマンのオケツ咬んだった。
公園はゴミ箱とちゃうわハゲ。
オババがアホのポメラニアン散歩中に砂場でしたウンコ拾わんかったから。ソレ、投げつけたった。
この公園の守り神ことキツネの三助様がな。ルール守って公園使われへんヤツを成敗してます。だってワシの縄張りやもんココ。
きゅるきゅるきゅるるるぅぅぅ~。
ん? 何かポンポン緩いな。
さっき昼に食ったカップ麺のズンドゥブうどん。辛かったからな~。お腹下したかも。どれ、公園のトイレ行くか……
「はぅッ?」
今、目の前でじーさんがトイレ入ってった。慌てて見に行くと個室、閉まっとるがな。
「ジジイのウンコは……長い!」
体内のウンコゲージが五割超え。下痢っぽいから悠長に構えとったらアカン。女子トイレは……使えん! ワシ、雄やもん。エチケット大事。
下痢やからその辺でしても始末でけへんし。てか、公園の守り神やからワシ。野糞、ダメ絶対。
「どしたの三助。真剣な顔して」
最悪のタイミングで、絶対に会ったらアカン相手に見つかってしもた……
「おーい、シカトすんなよ三助~」
白うさぎがワシの前にタタタって回り込んで表情をジッと見てくる。ストレスでウンコゲージ上がったけど。悟られんように気ィつけんとな。
下痢ぴーでピンチやなんてバレてみぃ……ありとあらゆる手段を使うていじってきよるわ。
「おぅ、ウサ。今ちょっと忙しいんや。またな」
ヤツは鼻ひこひこさせながらワシの右前足の義手を見とる。今日の義手はスコップ付き。さっきワン公のウンコ投げつけた時、臭いがついたかも。
「忙しいって…………ウンコ漏れそうなの?」
何がどーなったらそこたどり着くん?
コイツの面白レーダーの感度は異常ッス。怖い、怖いって、もう!
「イヤ、違。ワシに構うなウサ……」
目が。ガチャンてなった。
ロックオンされてしもたワシ。ウンコゲージ急上昇につき第一波が下半身を襲撃中!
「お腹痛いんじゃね三助? そこですれば。公園のど真ん中だけど」
小動物は何でか知らんけどウンコ好きが多い。既に観察体制に入っとるコイツ。
「大丈夫だよ三助! そーっとすれば、わかんないって。公園のど真ん中だけど」
下痢ぴーやねん! そーっとでけへんわ……あ、おケツ覗くのヤメてウサ。
「はわ?」
引いた! ポンポン痛いの消えた!
次のビックウェーブが来る前に動かんとッ! 公園トイレは……ジジイまだ出てけぇへん。近くのトイレどこ? 川向こうのコンビニまで十分か。
他にどっかトイレ、トイレ、トイレ…………
そーやッ!
バッてウサに向き直ったら、バッて顔を反らしよる。なんちゅう勘の鋭いヤツ。
「ウサ、お前ん家遊びに行ってええか?」
「うん。ダメ」
わかっとる。
ウサんトコのマンションまで歩きで二分。無言で移動を始めるワシ。
「ダメだよ三助? 僕ん家、火事になって無くなりました」
後ろ足にすがり付いてくる小動物をシカトして歩き続ける。
意識が「出す」にギアチェンしたから、もう後戻りは出来ん。目的地に向かって全細胞が集中してんのがわかる……ゾーン状態やと思う。
リンに助けてもらお。
リンやったらトイレ貸してくれる。
うさぎの叫ぶ声が遠くで聞こえる気がした。
ワシはマンションの階段を一段ずつ慎重に昇ってく。この振動はお腹にはダメージ大やけどな。
大丈夫ワシ。集中出来てるで!
集中集中。うん?
ふと、魔が差した。
『ココはもう公園やないから。ええんちゃう?』
途端、MAXになるウンコゲージ。
「ふぐぅおおおおおおおおおおおふぅぅッ!」
階段はまだ三階途中、501号室まで気の遠くなるよな道のり…………
「もう、ムリや」
踊り場で構えるワシ。
後ろにはガラス玉みたいに光るウサの目が。
その時!
ワシは伊吹山の森ん中におったんや。
「よう頑張ったなぁ、三助」
「婆様?」
目の前に懐かしい婆様の姿。
「もう頑張らんでええよ三助。お前はようやったわ」
涙で婆様が霞んで見える。
「婆様、ワシ都会で色々大変やったんよ。しばらくしゃべれんくなったりしたんやで!」
「ほうか、ほうか」
「婆様、ワシ今住んどる公園でな。お稲荷さんやーて祀られてんねんで!」
「ほうか、ほうか」
「婆様、ワシな、ワシな……」
気づいたらワシは。
501のドアの前におった。
泣きながらノックしたらリンが出て来てくれて。ウンコさしてくれた。
ウサはオーマイガーしとったけど。
それではまた……




