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人間の尊厳について

土曜日の20時更新です……

 魚の死んだような目って、よく言うけど。

 

 石みたい。赤い石みたいな目ぇしてウサがこっち見てます。どんだけ興味ないんだよボクに。

 

「ま、まぁ食べなよウサ。ほらポテト好きだろ?」

 

 ハンバーガー屋のテーブル席で向かい合う白うさぎと黒いトレーナー上下のボク。ども、里見洋介です。元漫画家のグループホーム職員ス。

 

 休みの日に商店街ブラついてたんですけどね。


 ボクより暇そうなウサ見つけたのにボクの事シカトして行こうとしたもんで。思わず引き止めてました。

 

 それで今、この状況。

 

「……何か用? 里見ィ」

 

 ポテト一本ずつカリカリカリって齧りながらウサ。

 

 リンさん居ないのに小動物なんかに用あるかい。ただアレだよ、人間としての尊厳にちょい引っ掛かっただけだわ。

 

「実はな、ウサ。悩み事を聞いて欲しい」

 

 何言ってんだボク。

 

「エエエエエエ~ッ。はああ…………別にいいけど」

 

 おおぉぉぉぉぉぅぅふ……


 野良のうさぎに人生相談する羽目になっとるー。しかもお願いする形ー。

 

 でもコイツの前に座ると何か……そんな気分になっちゃったんです。伊達にグルホでアニマルセラピーやってるワケじゃないッスね。

 

 丁度いいや。最近ちょっとモヤモヤしてた件あるんでお手並み拝見といきますかな!

 

「こないだ満員電車乗っててさ。ボクは席に座ってたんだけど、いざ降りるって時に誰も道開けてくれなかったんだよ」

 

「ふーん」

 

「……うん、でさ。こう人を掻き分けてって時にリクルートスーツ着た女子と向き合う形になったの」

 

「可愛いのか?」

 

「へ? あぁ、その娘か。そーだな、初々しい感じ? 悪くない」

 

「ふーん」

 

「…………えと、そんでだな。彼女の背中側からも降りようとしたヤツいてボクが前に出た時、その娘もこっちに押されて出たんだ。んで、ゆっくりと正面衝突」

 

「ふーん」

 

「ボクは右手を前にしてたんで肘に彼女のバストが、何ての。べちゃーって。もろべちゃーって」

 

「柔らかいのか?」

 

「お、おう! そりゃお前……ただお互いスイマセンて言ったけどさ。ボクの方は正直〝あざす〟でしょ」

 

「だねー」

 

「でさ。不可抗力だったとしても、だ。ボク的には罪悪感が残ったのね。だって、やっぱ……ねぇ?」

 

「この痴漢ヤロウ!」

 

「……話聞いてた? 不・可・抗・力!」

 

「奢ってもらった気分?」

 

「ウ~ン……………………まぁ、ハイ」

 

「この軽犯罪者!」

 

「何でだよ~」

 

「いい思い出?」

 

「少し特した気分」

 

「この変態偽善者!」

 

 欲しかったのこれだと思いました。

 

 やっぱ罪の意識あったんで。そこをちゃんと責められたかったんだなボクは。

 

「フッ、いい仕事するじゃんウサ。ちょっとだけ見直したわー」

 

 誉めると嬉しそうに目を細めてみせるうさぎ。

 

 ふふ。カワイイとこあるじゃんか。普段はただの困ったちゃんだけど。飯食わせていい子いい子してれば懐くんじゃね?


 キャッキャ言いながらお互いのポテト取り合ったりおチンチン小突き合ったりするボクら。


「金玉はやめろよォォ……そだ、ウサ。肘パイの話さ、リンさんには絶対言っちゃダメだかんな~」

 

 その時。


 ウサの目がほんの一瞬だけ。真っ黒な穴みたいになったのをボクは見逃さなかったんです。


 全く躊躇はしませんでしたね。

 

 一瞬で、綺麗な土下座をキメてたボク。

それではまた……

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