大橋哲也のリアルその1
土曜日の20時更新です……
ボクは大橋哲也。私立大学の二年生です。
日曜日の昼過ぎ。TT線M行きの電車に乗って、西田君の家に遊びに行くところです。
彼とは大学のクイズサークルで知り合い仲良くなりました。日曜日はいつも、お互いの家で競技クイズの自主練に励んでいて。今日は西田君の家でやる番なのです。
使い慣れた早押し判定機能付きのマイボタンを常時携帯。クイズに青春かけてます。
それ以外には目もくれません。くれませんですハイ。
今、ボクは車両の一番奥に座ってるんですが。ちょっとその、何て言いますか。目の前の席にですね。可愛い女子が座ってまして。まぁ、要するに……ね。
気になって仕方ない! ……んですハイ。
眼鏡を少し上げるフリなんかして。前方をチラと見たんですけど。
黒髪のボブが! ……とても似合ってますハイ。
ボクは少し自分の服装が気になり出しました。ストライプのカッターシャツをGパンにオールイン……ダサい。でも、この人ならこれで正解だと思ったんです。
何故なら真面目女子だから。だって、文庫本を読んでるんですよ。
サリンジャーのライ麦畑でつかまえて。青春小説の古典的名作。読んだ事ありませんけど。クイズ問題の知識としては頭に入ってます。あのサリンジャーです。
彼女はチェックのハーフパンツに白T(PAINのプリント)清楚で可愛いファッションだと思います。
ボクは彼女いない歴イコール年齢の人なので、恋愛偏差値が極端に低いです。だから普段は女性を避けて生きてきました。
苦手なんです。
友達の西田君も同様で〝勉強以外の時間をクイズで埋めて生きる〟事に二人で決めました。大学生になった時から。
それでも。知的で、可愛らしい女子となるとやっぱり気になります。
「おふッ」
変な声出た。服装の次に自分の髪型を思い出して愕然としたんです。MARUGARI…………。
なんだかんだ理由をつけて、ツーブロックとかではなく普通のボウズにしてました。お洒落偏差値も底辺の自分の事を彼女はどう思うんでしょうか。気になってまたチラと見ます。
相変わらず読書に夢中のようです。睫毛長いなぁ。何か……女優のSに似てないか。えっ、つかSじゃね?
日の光を浴びて、まるで公園のベンチに座ってるかのようなS。
ボクは妄想を加速させようと試みましたが。
……気になる…………。
彼女の隣にちょこんと座ってるうさぎが。白くて耳だけ黒いヤツ。
さっきから気のせいでなければ。
ガン? を飛ばして来ているように思うんです。
ボクはそっち方面も詳しくないから判断がつきません。ただ、うさぎの表情が
あ?
て感じになってます。彼女をチラ見する度に。
「……何でうさぎが僕にガン飛ばすんだろ」
今度はうさぎを見てみました。
やはり「あ?」てなってます。ボクが思わず視線を外すと「チッ」て舌打ちされました。
し、舌打ちって!
うさぎがッ。ボクに喧嘩売って来たああああ?
それではまた……




