キツネと犬系女子&ロック
土曜日の20時更新です……
秋のうろこ雲を眺めながら。
ワシは公園のベンチで右前足の義手につけたオカリナ吹いとった。
ぽォ~ぽォ~ぽォぽォろろろ
ハッ、て気付いたら隣に女の子が座ってた。
かわいらしいカッコしとるけど……背中に何かゴツいの担いでる。髪の毛緑色のオカッパやし。ん、泣いてんのかコイツ?
「な、何や」
「ごめんねキツネさん……音に釣られて来ちゃったんだけど。んと、おてて無いって知らなくってぇグス」
「は? イヤ別にどーでもええわ」
「えとえと。その、食べ物とか困ってないぃ?」
「大丈夫」
また泣き出した。涙出てへんけど。
「エフッごめ……ごめぇぇんね。同情してごめんね」
初対面やのにやたら謝ってきよる。流行ってんのかコレ?
「……………………(パクパクパクパク)」
「な、何や」
「ごめぇぇんね」
試されてますかワシ?
イヤ、何が正解なんかわからへんて! ウサみたいやなコイツ。スッゴい不安になるんやけどー。じっとこっち見てくるし。
「…………えー、アンタは悪くない。ですハイ」
コクって頷いた。正解スか!
ほんで自分の頭ポンポンして、その姿勢のまんま待っとる。しゃーないから恐る恐るポンポンしてみた。
おおッ、嬉しそーやん!
懐いとる懐いとる。ホレ、お手。うしゃしゃしゃ、いい子いい子~。ん、背中の袋から何か取り出したな。ギター? ギターやんかソレ、どーするん?
ギャンギャーン、ジャッキジャッキ
引き始めた。
ワシ、思わず大爆笑。
「ウヒャヒャ! 何そのショボい音~ッ。下ッ手クソやなお前、もっとしっかり弾かな……」
「だってエレキだもん。うぅぅッ」
またウルウルやんコイツ。涙出てへんけど。
とりあえず頭ポンポンして「せやな~。えれきやもんな~」て言うとくとピタッて止まる。オケ、マスターした。
それから一緒に〝ぽォ~ぽォろろ~ジャッキジャッキジャツ〟て演奏会みたくなって。
曲が出来たらしいです。
「あたし璃子。キツネさんは?」
「三助」
「三助くん今の演奏。テーマとかあるぅ?」
「栗と柿」
何かウケとる。イジられんのかと思って少し不安になるワシ。ウサやったら畳み掛けてくる絶対。
「じゃそれで歌詞つけとくね。今度ライブ来てぇ。絶対だよ!」
変なチケット渡してきよった。誰が行くかボケ。
ん? ……ジュース無料で飲めんのかコレ。
✳✳✳
ライトがボンヤリ点いてる。
奥の方に赤い服着た璃子と他女子二人。
隣町のビル地下にある窓一つない小さな店にワシはおった。
薄暗くて何もない部屋にポツン、ポツンて人が立ってる。皆、璃子の方向いて……チンアナゴか。
ワシはカウンターで貰ったオレンジジュースちびちびやりながら寝転んでた。だって何してええんかわからんもん、こんなトコ。
ほしたら、いきなり!
いきなりやで。奥に置いてあった両方のデカい箱から轟音が鳴り響いたんや!
「か、雷ぃぃッ?」
ビビって耳ペタんてなるワシ。
その雷は璃子が鳴らしとった。ヤツがギター掻き鳴らすたんびに雷が落ちる。
ワシはお股の間に尾っぽをぎゅううて挟み込んだ。でもすぐ気付く。この雷の音は音楽なんやって。雷様の音楽。
そのうち他の女子二人も太鼓やギターで轟音鳴らし始めた。
空気が渦になって回り出す。
下手っぴやと思ってた璃子のギターが今、ワシの全身を震わせる。何やコレ、何やコレ、何やコレ!
体毛が逆立って尾っぽもピンてなった。
周りのチンアナゴがゆらゆら揺れとる。ワシも揺れてみたら、ごっつ気持ちええ。
祭りやと思った。
「アォーオオオンオンオンオンォ……」
鳴いたった。キツネの野性、大爆発やね。もうこーなったら止まらへんでワシ。今やったらウサと勝負しても勝てんちゃう?
血。
血ィ見んと収まらんコレ。
その辺のチンアナゴの脚にかぶり付いたろかなー。バッキバキの目で獲物を探し始めた、そん時。
「あ!」
雷落としのオカッパがマイクの前に立った。これ以上ワシを狂わせる気ィかコイツ。ええやんええやん、とことん行ったろーやないの。
来いや……来いや、来いや、来いや、来いや、璃子おおおおおおおおーッ!
「栗と柿ってぇキツネさんが言うぅ~ふっふ~♪」
……………………。
「栗と柿ぃぃ、栗と柿ぃぃ」
……………………。
「ふっふ~♪」
ワシは爆音の中沈んだ。
それではまた……




