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ラーメンの流儀

土曜日の20時更新です……

 やる気はない。


 ラーメン屋って言うと黒Tに頭タオル巻いた腕組みエプロンの頑固親父とかイメージするみたいだけど。


 ウチは大衆向けの安さだけがウリの店なんで。普通に中肉中背、中年メガネの俺が白T着て無表情でやってます。


 一杯390円なのよ。


 スープは化学調味料ドバドバで麺は市販製。チャーシューは業務用、メンマは缶々のを使ってる。


 そもそもが立ち食いだからさ。さびれた駅前にポツンてあるカウンターひとつだけの屋台っぽいヤツ。それ以上でも以下でもないんスわ。


 さっきからね。


 その、カウンターの上に……白うさぎとアライグマが二匹でペタんで座ってんだよ。


 券売機でチケット買う時からさ。うさぎが、こうジャンプしながらボタンばちばち叩いてて「こわッ」て思ってたんだけど。


 俺が湯切りしてるとこをジ~ッと見てくんのよ二匹して。


「一流の動きだねジョー。スキがない」


「仰る通りですウサさん。これは名店に当たったかもしれません!」


 何言ってんのコイツら。ここ立ち食いスタンドですけど。


「ホントは喋ってちゃ怒られる。こーゆートコって」


「あ、そうなのですね。張り紙ないので気付きませんでした。さすがウサさん」


 立ち食いであんまペチャクチャ喋ってく客いないけどさ。別にいいんだよ気楽にしてて。ハイ、ラーメン一杯お待ちィ。


「最初はスープからなジョー。麺からいくとお店追い出されちゃう」


「イェッサ、ウサさん!」


 何か……このうさぎ情報が偏ってない?


 ま、シェアすると思ったからレンゲ二本と小鉢も出しといた。スープ、熱いから気をつけて。


「うん! この深味はハマグリと鶏だと思う」


「この澄みきったスープ。ですよねウサさん!」


 小動物は舌がバカなのか。化学の味じゃんこれ。

 

 ちゅるるんッ。

 

 散々騒いでたクセに。


 麺は丁寧に一本ずついっとる二匹。ん? 何か急に黙り込んじゃって……市販のだってバレたか。別に隠してるワケじゃないけど。

 

 ちゅるちゅる、ちゅるちゅる。


 お行儀良く麺を啜るうさぎとアライグマ。

 

「ぷッ……」

 

「クスクスクス」

 

 何かお腹抱えて笑い出した。どうやらコイツらにとって麺を啜るって行為は面白おかしいらしい。

 

 ひっくり返って笑っとる。コラコラ食事中だぞ。

 

「あー、楽しかったねジョー」

 

「ですねウサさん。私、実はラーメン屋さん初体験で緊張していたのです」

 

「ちゃんとルール守れば大丈夫。僕、リンとたまに食べに行ってるから慣れてる」

 

 そっか。このうさぎは黒Tのこだわり頑固親父の店に通ってたんだな。舌はバカだけど。

 

 しばらく二匹は給水器で遊んでからカウンターを飛び降りると「美味しかったね!」って言いながら仲良く帰ってった。

 

 後片付けをしながら。少し笑顔になってる自分に驚く俺。


 濡れた手でメガネをくいってやる。

 

 ほんの少しだけやる気出た。

それではまた……

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