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夜更かしうさぎと黒山羊

土曜日の20時更新です……

  僕はたまに悪い子になる。


 夜中にこっそり起き出して深夜アニメ見たりとか。そんでテンション上がった時は、リンが寝てんの確認してから外に出て走り回ったりとかしてる。

 

 うさぎだからね。夜行性ってワケじゃないけど薄暗いと活動的になんの。赤目がキラリ。

 

 今、公園まで駆けてキタ。


 夜の公園好きだよ。誰も居ないのに誰か来そうな感じが気分ワサワサだし。たまに見回りのポリ公がウザいけど。冬は空気が澄んでて街灯もキレイ。

 

 アレ? 街灯の下にボンヤリ何か立ってる……

 

 人かなー? 黒い服。でもデッカイ角生えてて真っ黒な毛むくじゃら。足が蹄になってる。


「羊さん?」


「失礼だなうさぎ。オレは山羊だ」


「何してんの?」


「悪事を企んでたのさ」


 ここにも悪い子がいた! 山羊人間だけど。悪い子仲間になれるかな。


「僕も悪いコトしよーとしてた」


「そうか。悪いヤツは嫌いじゃない」


「えとね! 今から植え込みの中で寝てるキツネの三助の義手を勝手に取っ替えます」


「朝起きるとビックリだな」


「うん!」


 僕は三助の寝床にそーっと忍び込むと、義手を電動歯ブラシからウォーハンマーに替えといた。


 走って山羊んトコに報告。


「これで朝起きても歯磨き出来ないよ!」


「そうか。ウォーハンマーのチョイスがオレ好みだ」


 誉められた! 嬉しくなった僕は次の計画を練る。


「えと、えと……そだ! 元漫画家の里見ィがリンのコト好きだって皆にバラします」


「それは恥ずかしいな」


「だね! あ、でも紙と鉛筆がないや」


「これでいいか」


 山羊が紙と鉛筆をくれた。用意のいいヤツ!


 僕はトップスピードで里見のアパートまで突っ走ってくと部屋の前に「リンがすき」って書いて置いて来た。


「ハァ、ハァ、やってキタ!」


「平仮名の〝すき〟が個人的にはツボだ」


 また誉められた! 悪いコトして誉められるのって何だか嬉しい。


「次! 次はね~」


「もういいんじゃないか、うさぎ。お前は今夜いっぱい悪事に勤しんだ。帰って休むといい」


「ええええええぇぇぇぇええぇぇぇーッ……」


 折角楽しかったのに残念な気分。こーゆー時の僕はしつこい。


「もっとやる~、悪いコトやる~」


「オレは忙しい」


「突っ立ってるだけじゃああああーん! 何もしてないいいいー!」


 この時初めて山羊が笑ったよーに見えた。


「山羊さんはどんな悪いコトしてんのサ~」


 僕は脚にしがみついて駄々をこねる。カッチカチの骨だけの脚。


「オレはただ一言、悪いヤツに囁くだけさ」


「悪いヤツって?」


「ニュースでやってるだろ。大手アイドル事務所の創業者とかロシアの大統領とか。ああいう手合だ」


「何て?」


 ぶぅわさァ。


 山羊さんの背中から何か、黒いの出た。


「天国なんて無いから安心しろ、ってな」


「ないの?」


 答えてくれない。


 毛むくじゃらだけど人間の手だった。静かに僕をひっぺがしてから。


 夜空向かって飛んで行った。

それではまた……

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