生き霊を飛ばされる小動物
土曜日の20時更新です……
暑いから溶けてる~。
グループホーム『おだんご』のエアコンが効いた一階ロビー。テーブルの上でびろーんて伸びてる僕。
うさぎだから暑いのはムリね。
「ウサくん、ウサくん。起きたまえホラ。センズさんが来てるよ」
マッチョゴリラのトイプードルがイカれた筋肉で僕を抱き起こしてユサユサ。ここじゃダラダラ過ごすって決めてんのに~。ロッキーは職務に忠実な犬です。
「アニマルセラピーの仕事をしないとウサくん。傾聴対応。話を聞いてあげるのが我々の責務だよ」
「ロッキーが相手したげて。僕、脱力すんのに忙しいんだ」
入居者のセンズはポンポコお腹の三十男。何でだかしんないけど、いつも僕んトコに来んだコイツ。
「…………今から元カノに会いに行く」
「何だとぅぅおおおおおおおおおおうッ?」
食い付く僕。とロッキー。
こないだそんな話聞いた気する。覚えてないけど。元カノと再会すんだっけ。
よく見たらセンズ。
サスペンダーでジーパン吊って(お腹ポンポコでベルト出来ない)両方の後ろポッケからタオル一本ずつ垂らして(お尻の形を見られたくない)白ランニングシャツの上に黒ベスト着てる。
「SF映画に出てくる宇宙人?」
「ウ、ウサくん! 言い方!」
慌てるロッキー。
センズが百均で売ってるサングラスを無言でかけてみせる。
「つまんないコントに出てくる宇宙人!」
「ロッキー、言い方」
元カノに会うだけだからカッコとか、どーでもいいと思う。職質食らわなきゃセーフね。
そしたら調子こいてきた、このグラサン野郎が。
「ついてきて欲しーんだけど白うさぎ」
「は? やだね。僕時間一杯ダラダラすんだから」
「センズさん。我々の仕事は入居者さんの話し相手になるコトだから。ここを離れるワケにはいかない」
「……………………」
両手で頭抱え込んでフリーズするセンズ。僕も真似してみる。一分間そのまんま。そのまんま寝ちゃった僕。
ん?
何か見られてる気がして……
バッて跳ね起きた。
でっかいゴーグルとマスク。灰色ワンピの女の人が 目の前に立って僕を見下ろしてる。
右手に筒みたいなの持ってんの何?
しばらくリアクションなかったから。また寝よっと思ったその時。
ぴぃしゅうぅぅぅぅぅッ……
右手の筒から青白い光の剣が出てきた。
「ライトセーバーだあああああああああ!」
コーフンする僕。でも女の人はノーリアクションでじっとしたまんま。黙って見てたら「ぴしゅん」て剣が引っ込んだ。
「それ僕にもやらして!」
シカトする女の人。僕はゴロゴロ転がって「意地悪するウウウウウッ」て叫んでると
ぴしゅうぅぅぅぅぅッ……
剣、出てきた。
「僕がやりたいのソレ!」
久々の足ダン。
ダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダン。
耳からも白い煙がしゅううって。
そしたらゴーグル女が言ったんだ。
「Patience you must have」
…………ユサユサユサ……ユサユサユサ
イカれた筋肉が僕を抱き起こしてシェイクしてる。
「ウサくん、ウサくん。起きたまえホラ」
液体化した体に血を巡らす。特に頭ね。
「アイツどこ? ロッキー」
「元カノに会いに行ったよ。一人で行った」
そかー。
「再会。上手く行くといいんだが……」
「ぺいしぇんす ゆぅ ますと はぶ」
はあ? て顔してるロッキー。
「僕もイミフ」
だって英語、わかんないもん。でも覚悟は伝わってきた。
センズの彼女、自分に言い聞かしてたんだと思う。
飛ばす相手間違ってるけど。
それではまた……




