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ウサのお友達、パンダのパン田

土曜日の20時更新です……

 近所にある市立公園。今日はポカポカ陽気のお散歩日和だ。

 

 僕は緑色のオーバーホール着て、ベンチでお菓子食べてた。リンから貰う一日百円のお小遣い。

 

 今日はお気に入りのポップコーンを買った。

 

 ポップコーンは食べるのも好きだけど、寄って来た鳩にあげるのも大好き。自慢の黒耳ひこひこさせながら足下の鳩達に一個ずつ投げ与えてやる。

 

「飢えた鳥類が『クルックー』とか『ポッポー』とか言って右往左往する様を見てるとな、何だか愉快で豊かな気持ちになれる……」って前によくここに座ってたおじいさんが言ってたから。僕もそーしてる。

 

 しばらく続けてたら一際デカい『クルックー』がやって来て他の鳩を蹴散らし始めた。

 

 僕は無表情で右に左にポップコーン投げる。そいつは「クルックー、クルックー」て言いながら、必死にそれを拾っては口に放り込んでく。

 

「何やってんのパン田さん」

 

 ボロボロの黒いトレーナー着たパンダがいた。人間の大人位の背丈がある。

 

「あっ、こんにちはウサくん。今食事中なんだ。気にしないで」

 

 異様にガリガリのパン田さんが僕に向かって両手で『来いよ、来いよ』アピールしてくる。瞳孔がパッカーン開いてて少し怖い。

 

 仕方なくポップコーンを投げる。左、右。右に左に飛ぶパン田さん。

 

 アレ? ……ちょっと面白い。

 

 今度は前後にも振る。しっかり付いてくる。なかなかいいフットワークしてんじゃん、ガリのくせに。

 

 右、と見せかけて左手前に落とす。

 

 ざぁさあぁーッ!

 

 頭から突っ込んでベンチに激突。僕のお尻が一瞬浮いた。でも、その両前足にはポップコーンが。

 

 高々と差し上げて口に放り込んでみせるガリパン。

 

 これでスイッチの入った僕は「やってやんよーッ」とか言いながら四方八方にポップコーン投げまくり。ガリパンも雄叫び上げてキャッチし続けた。

 

 砂煙の中コーンが飛び交うベンチ前。

 

 鳩に餌やりしてたのに、いつの間にか真剣勝負になってる僕。


 飢えてるクセにカロリー消費してまでお菓子をゲットしよーとするパンダ。

 

 お互い本来の目的からズレてるけど……熱い。

 

 結局全部投げた。汗まみれのうさぎ&パンダ。

 

「いやぁ、汗かいたな。ハハ。改めてこんにちは、ウサくん」

 

「はぁはぁ、こんちは……パン田さんまた痩せた?」

 

 すでに息整ってるガリパン。回復早ッ。手足が細く頬も痩けてお腹ぺったんこ。パンダ好きの子供が見たら泣き出すレベルね。

 

「そんなコトないさ。気のせいだよ」

 

 可愛らしくでんぐり返しをしてみせるけど。柔道家が回転受け身取ってるよーにしか見えない。

 

 僕はあと百円持ってたから菓子パンでも買ってやりたいと思った。けど、このパンダはプライド高くて施しは絶対に受けない。平気で鳩にはなるクセにサ。

 

「Y川でね。こないだ鯉が取れたんだよ。あの時は久々にディナーを楽しんだかな」

 

 生で貪り食ったんだろ。


 あちこちの公園の花壇でトカゲや虫を捕まえてんの、よく見かける。仕方ないから「近所のパン屋さんで見切り品コッペパン一本買って来て」ってパシらせるコトにした。

 

 ウサくんの頼みなら行ったげる。しょうがないうさぎめって感じでダッシュで買って来るパン田さん。

 

 バッキバキの視線感じながらベンチに座ってパン食べる僕。本当はポップコーンでもう、お腹一杯なんだけどな。

 

「ふう……。僕もう食べれないや。パン田さんお願い」

 

 食べ物を残したら罰が当たる。ウサくんに罰が当たっては大変だ! とか言いながら残りの半分を平らげる腹ぺこパンダ。

 

「実はこれから仕事なんだウサくん。それじゃまた」

 

 僕は知ってる。

 

 パン田さんの仕事。それは餌場の見回り。


 餌場ってのは食べ物屋さんのゴミ箱のコトで、それぞれ縄張りがある。今、Y市から流れてきたコアラと血で血を洗う抗争を繰り広げてるらしい。


「死ぬなよ……」

 

 痩せたその背中に呟く。

 

 そしたらパン田さん、もう一度でんぐり返しをしてみせた。

 

 体操選手みたいだった。

 

それではまた……

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