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パンダとリスと梅雨空と

土曜日の20時更新です……

「気持ちええ…………チョー気持ちええ!」

 

 思わず声出ちゃったかな。


 パン田にとって六月はいい季節なんだ。だって梅雨時のこの雨ときたら! 正に天然のスパじゃないか。


 パンダの毛って天使みたいにフワッフワだと全人類が信じてると思う。でもね、実は剛毛で油ベトベトだったりする。ウソじゃない、信じて欲しい。神の創りたもうたカワイイの権化にもゴツいトコは、ある。

 

 だから小雨じゃノンノン。


 これっくらいのジャジャ降りでなきゃ物足りない。この天からの恵みを受ける時、パン田は地球から愛されてるなと感じるよ。

 

 公園のベンチで、昼間っから豪雨のシャワーに興じていると。隣に何者かの気配が……

 

 ちっちゃいポンチョ着たリス君? が居た。

 

「こんにちは、パンダだよ」

 

「こんにちはパンダ。雨に濡れてると風邪引くぞとシマちゃんは思う」


「ご忠告感謝しようリス君。でも大丈夫。動物の王様パンダは風邪なんか引かないんだ」


「王様のランキング何位ですか?」


「勿論一位だよ」


 何のランキングかさっぱりだが。パン田はいつでもナンバーワンさ。リス君が「宝物庫に行ったのか?」とか「こんなガリガリなのに!」とか興奮してるけど。面倒だから切り上げるとするかな。


「お先に……」


「犯罪者が王様って変だとシマちゃんは思う」


 聞き捨てならないワードをぶっ込んでくるリス君。


「ん、ん、ん? 何を言ってんのかなリス君」


「シマちゃんです」


「あ、うん。シマちゃん、パン田が何だって?」


「犯罪者。ウサ師匠が言ってた」


 ガッデム。ウサくん絡みの案件か!


 パン田が公園出口目掛けてダッシュ決めようとした、その時。


 ゥウウウーウウウウー…………


 パトのサイレン音が聞こえてきて。咄嗟にベンチ下に避難をするパン田。地震の時と同じでね、体が勝手に反応するんだ。


 しばらく様子見してから静かに立ち上がってみる。


 大丈夫。パトもポリ公も居ない。


 激しい雨が、まるで全てを洗い流してくれてる気がしたね。包み込まれるよーな感じ、実に心地いい。


 パン田は両の前足を天に向かって広げた。


「罪は消えないとシマちゃんは思う」


「犯罪者特有の緊張感と解放感を味わってるよーに見えたのならそれは誤解さ。パン田は大自然からの祝福を受けとっていただけ」


 どうやら長居をし過ぎたようだ。シマちゃんは口から何かを取り出している。


「コレあげる。シマちゃんの非常食」


「ひまわりの種かい? いきなりどーしたのかな」


「いつも監禁場所の窓からパンダが鳩さんのエサ横取りしたり、虫捕まえて貪り食ってんの見てました。お腹空かせてて可哀想だと思う」


 言ってる内容は合ってるけど。監禁て?


「お気持ちだけ頂いておくよ。これから雨で地上に上がってきたザリガニの踊り食いしに行くんでね」


「シマちゃんも見てみたいソレ」

 

 可愛らしいポンチョだ。いいとこのペットなんじゃないか、この子。


 ここから川まで少し遠いし雨も強い。家の人が心配するだろうし……これ以上ウサくんのお弟子さんと関わるのもデンジャーだ。

 

「ゴメン。シマちゃんはもう帰りなさい」


 ん?

 

 また何か口から出してくるシマちゃん。


「コレあげるから一緒に行こ」

 

 ひゃ、ひゃ百円玉だアアアアアアアアッ!


 きっとウサくんから吹き込まれたんだろう。パン田は百円が大好きだって。


 その通りさーッ!


 これがあればザリガニディナーの後に菓子パンが食べられる。もうね、頭ん中は百円でハチ切れんばかりだよオオ。


 それだ、それが欲しい! 銀色の丸いヤツ!


「人間が寝てたから財布ってヤツ開けて取った」


 ちっちゃい前足で大事そーに百円玉を抱えながら、シマちゃんが言う。


 ふうううううううううううううううううう。


「……大雨の時の川は危ないから。ここでバイバイしよう。あと人間の財布に戻しておくんだよ百円」


 お前が言うか、的な視線を投げてくるシマちゃん。


「パンダに生まれついたコトが罪と言うなら、それは認めよう」

 

「意味わかんないと思う」

 

 シマちゃんはてててと公園の向かい側にある一軒家に帰ってった。ここからいつも覗き見してるらしい。

 

 ま、パンダは見られてナンボだから。

 

 最後に振り返ったシマちゃんにでんぐり返しをプレゼントするパン田。お目めを真ん丸くして驚いてた。いい子だ、グッボーイ!

 

 背中が泥まみれだけど。


 全然気にならないね。

それではまた……

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