限界突破×モモンガ×白うさぎ
土曜日の20時更新です……
アイ・キャン・フライ。
心ん中で唱えてみた。
『ほっぺた』で毎日十分だけクッキー作ってる。働きモンの小動物、モモンガのヨースケとは俺のコトさ。
シゴオワにウサと六階の屋上へIN。いつもならダベって帰るトコなんだけど……今日はちょっと違う。やりたいコトがあんだわ。
手摺の間から屋上の縁に出てちょこんと立つ俺。ウサが神妙な顔してんのウケる。
「ヨースケ。そんなにビラビラ皮膜のコト悩んでたなんて……知らなかった僕」
「百歩譲ったとしてもウサ。このシチュエーションで『早まっちゃダメ!』的な勘違いすんのはわかるよ。でも皮膜がどーこー言ってくんの地球上でお前だけ」
モモンガは飛膜を広げて滑空する。その姿は〝空飛ぶハンカチ〟って言われるくらい可憐でカワイイ。
普段脇の下にビラーンてなってるけどもね皮膜。
「早まらないなら何やんの」
「うん。先週さ、ウサのダイエットに付き合ったじゃんか高尾山」
コイツね、プリンの食い過ぎで太っちゃって。リンから痩せろって言われて草食ダイエットしたけど、あんま効果なくって。最終的に山籠りしたんだなー
「高尾山駅のお蕎麦屋さんでとろろそば食べたりお団子食べたりして楽しかったね、ヨースケ!」
「うん、だな。でも山ん中入ったら狂ったみたいに走り出して……どっか行っちゃたろウサ」
「忘れた」
「俺どーしょうか迷ったけど。勇気出して登ってみたんだ高尾山。そしたらさ、街の公園じゃ見たコトないよーな背の高い樹がいっぱい生えてて!」
「ふーん」
「もう、びゃんびゃん飛びまくってさ。最終的には天辺から飛べるよーになったんだぜ!」
「ふーん」
ふーんて。
山奥から元通りのフォルムんなって帰ってきたウサにはスンゲー驚かされたけど。今回の山籠りで俺も変わったんだ。
「えーと。今から下まで飛びます俺!」
「ふーんん?」
ふーんんて。あ、でも驚いてる驚いてる。
「…………ぺちゃんて?」
「ならねーわ。つか、地上に着地してそのままトコトコ歩き出すわ何事もなかったかの如く」
フラグっぽい展開になってんの少し気になるけど。今まで何とな~くキャラ付けで言ってた『あー、大空飛びてーなー』をマジで叶えてやんよ!
「フッ、いいかウサ。都会のビルから初めて滑空したモモンガの勇姿、その目に焼き付けとけい……」
俺は躊躇なく屋上の縁を蹴った。
「とぅおおおおおおおぉぉぉぅ!」
空飛ぶハンカチーフが宙を舞う。
びゅおお~お~おおおお~お~お~
突然、もんのスゴい風が吹き上げて来た。多分ビル風ってヤツだ。翻弄される俺。
「う、うわこわこわこわこわ怖ひいいいいいいッ」
着地目標だった道路向こうの歩道からファアアアッて逸れてく。ヤバ、ヤバくね? どっかのビルにぺちゃんてなるかもだコレ。
ウサが何か叫んどる。
「もっと羽ばたかないと落ちるぅぅ」
イヤ、広げるだけね飛膜。羽ばたくのムリ。
でも……イケるよ!
山じゃ色んな樹の間すり抜けて滑空してたんだわ。ビル避けて着地するなんてお茶の子さいさいじゃね?
「うぉぉぉーふ」
グゥイイイイイイイイインて。
尾っぽを使って軌道修正、上手にでけた。
アイ・キャン・フライ・ナウ!
着地予定だった歩道に降り立つ俺。そのままヒョコヒョコと歩き出す。
「ぺちゃんてならなかったぁぁ?」
ウサの声が屋上から追いかけてキタ。
「イヤ、ならねーから!」
振り返らずに片前足を掲げてみせる。
少しお漏らししてんのは内緒。
それではまた……




