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常勝ハムスターVS負け放題マン

土曜日の20時更新です……

 焼き肉の食べ放題に来てます。


 ぼっちで。

 

 こないだ小猿さんとのメンコ対決でボロ負けして、その場から逃走した男。元漫画家の里見洋介です。

 

 あの時肩壊したんですよボク。一投目で。

 

 自分の非力さってんですか。思い知らされました。漫画家にフィジカル関係ねーって生きてきましたけど。もう漫画家じゃないし。

 

 結局中途半端なんスよね。グループホームの職員としても男としても……

 

 何かパワーつけたくって焼き肉食べに来ました。


 とりあえず食べ放題なんで高そーなモノから頼んでます。牛カルビですか。


 網の上にめっちゃ敷き詰めて焼いてみました。自分で焼いて食べんのって結構面倒臭いっしょ。出来るだけ少ないターンで済ませようと思って。


 目の前、火の海。


 網がボーボー燃えてます。うわ、どーしよ?


 ボーゼンと炎を眺めてると……テーブルの上にちっちゃな影がひとつ。覆面? 被ったハムスターがいつの間にか立ってました。店の制服来てますけど。


 そいつはトコトコとボクの前まで来るといきなり、アゴにチョーパン入れて来たんです。ボコん!


「むがふッ」


「お客しゃま、デンジャーでしゅよ」


 一瞬、脳揺れたァァ。

 

 ハムスターは黒いコップに入った氷を網に向かってポンポン投げてます。あ、鎮火した。こーゆー使い方すんのかこれ。


「あふ、スイマセンした…………でもお客さんにチョーパン入れちゃダメなんじゃね?」


「ゴメンなしゃい。店燃やそうとしてんのかと思ったから」


「肉焼きたかっただけ! 店員さんサ、七番勝負でデカい蛇締め落としてたよね? 見覚えあるもんその覆面」


「小猿とメンコやってボコしゃれた人?」


「え? ま、まぁね。うん、その人……です」


 ちっちゃな店員さんは愛想笑いを浮かべると網の掃除を始めました。黒焦げのカルビをボクの取り皿にポンポン投げ入れます。


「…………別に気にしてないけどね。メンコで負けたくらいで」


「でしゅね」


「店員さんはちっちゃいのに強いんだ」


「でしゅね」


「何で覆面?」


「アタチ、覆面女子プロレスラーになるのが夢なんでしゅよ」


 マジか。夢語りするヤツ久々に会ったわー。でもムリだよねハムスターだし。焦げた肉美味い。


「なれなかったらどーすんの?」


 ヤベ。意地悪な事聞いちゃいました。夢破れた元漫画家のクエスチョン。するとキョトンとした感じで店員さんが答えたんです。


「へ? 死にましゅけど」


「し死ぬのッッ?」


「でしゅね。勝負ゴトに負けたら死にましゅ」


「…………じゃ、こないだの蛇とのヤツ負けてたら」


「死にましゅ」


「え、え、じゃ、小猿とメンコ対決で負けたら」


「死にましゅ」


「……………………漫画家で売れなかったら」


「死にましぇん」


 そこは死なないんだ!


 何故だかホッとするボク。でも次の言葉でまた脳ミソ揺らされる事に……


「売れるまで死にましぇん」


✳✳✳


 店を出るとまだ陽は落ちきっていませんでした。


 九十分のコースなのに三十分くらいで出てきちゃったみたいで。商店街のビルとかが赤く染まってます。


 結局、追加のカルビ一人前とミニビビンバとサラダでお腹一杯になったボク。食べ放題の元を取るには程遠い内容でした。


 それでも。


 新たに心に灯った炎は消えるどころか燃え盛っています。

 

 ボクも死にましぇん。

それではまた……

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