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特定外来生物の日常

土曜日の20時更新です……

 喧嘩相手の殿方を探してブ~ラブ~ラと。商店街を肩で風切って練り歩くのでございます。


 あ、申し遅れました。


 私、荒ぶる特定外来生物ことアライグマのジョーと言います。以後お見知り置きの程を。


 実は最前仕事で少し嫌なコトがございまして……あ、私『ほっぺた』というパン屋さんで一日十分クッキーを作っているのですが。


 生地を伸ばす際に、つい習慣で水洗いしてしまうのです。ええ、生地を丸ごと。アライグマなものですからね。すると主任の後藤さんが怒るワケです。「キャベツじゃねーんだ」とか何とか。


 今度主任をぶん殴ると私クビになりますので……はい、以前にめん棒でぶん殴ったコトございます。

 

 なので仕事帰りに憂さ晴らしをしようかと思い、人気の多い商店街までやって参りました。ここでなら喧嘩相手の二~三人は見繕えるかと思いまして。


 一応多人数相手も想定してオーダーメイド(アライグマサイズ)の三段警棒、用意しております。


 希望としましては動物を下に見られる方、中年なのに指までタトゥーが入っておられる方なんかが来られるとテンション上がりますね。好みでございます。


「おーい! ジョオオオオオオッ」


 これはこれは。あちらからウサさんが走って来られます。ウサさんは『ほっぺた』での私の先輩で大変お世話になっているうさぎさんです。今日はお仕事休まれていたようですが?


「昨日遅くまで深夜アニメ観てて。さっき起きた!」


「もうお昼前ですよ。こちらへは買い物か何かで?」


「ヒマだから誰かいないか探してた!」


 成る程。


 こういう時のウサさんには注意が必要です。


 かなり高いレベルのヒマ潰しを要求されるので。私は最も会ってはいけないタイミングで会ってはいけない小動物に捕獲されたワケです。


「ジョーは何してんの?」


 来ましたね一発目。ここで間違えるワケには行きません。慎重に言葉を選びます。


「はい。保健所の連中に捕まるかどうか、人混みを散策して実験を試みていたトコロでございます。私、特定外来生物なだけに」


「出た、特定何とかーッ。カッコいい、ジョー!」


 フフ、ウサさんにはコレ鉄板なのでございます。


 あ、本当の話である必要はないのです。ウサさんが食い付くかどうか。そこだけに私命を懸けております。


「でも……もし捕まっちゃったらどーする?」


 興味津々のお顔です。しっかり集中しないと私!


「その時はこの、三段警棒でッ」


 シャキン!


「ケージをぶち破って差し上げます」


「すごッッッ、ジョーかっけー!」


「さらに車の窓ぶち割って逃走致します」


「ヤバいわジョー、リスペークツ!」


「ついでに職員の頭もかち割ります」


「……人叩いたらダメだよジョー」


 ガ、ガッデェェェェェェェェェェェム! 


 ウサさんは対人攻撃NGなのでしたッ…………


「しッ……失礼しましたッ。え、えと、ウソです。ぶっ飛ばすのは…………や、役所とか警察とか? ワケのわからないルールで我々を縛ろうとする国家権力でございますウウウウウ!」


 静寂。


 しゅうううぅぅぅぅぅぅ……


 おや? 


 何か今、ウサさんの耳から白い煙が。


「やっぱスゴいやジョーは! 何言ってんのかわかんなかったけど!」


 土壇場で正解を叩き出しました私!


 我ながら見事な返しです。途中「ウソです」とか申してしまいましたが。結果オーライでございます。


 その後ウサさんは、よく仕事帰りに寄ってらっしゃるコンビニに私を連れて行って、コロッケを奢ってくださいました。

 

 大変楽しい時間を過ごせたのです。

 

 憂さ晴らしの必要が無くなる程に。

それではまた……

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