表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/229

ウサ、悪夢の職務質問 ~起死回生~

土曜日の20時更新です……

「……持ってない」

  

 うつむき加減で答える僕。

  

「はい。じゃちょっと、交番まで来てもらえますか」

 

 眼鏡の警官が言う。リンの為に早く買い物しないとなのに。何で邪魔すんの? 意地悪が好きなの?

  

「はああ……無いわ~コイツ」

 

「は?」

 

「ムリ」

  

「はい?」

  

 うつむいたまま首横に振って。じり、じり、と後退る僕。耳が斜め後ろにピーンてなってる。

  

「リンが待ってるから……早く買って帰らないと安心出来ないから」

  

「イヤ、だから交番にね」

  

「動物虐待」 

 

「へっ?」

  

「ペットが健気に飼い主のお使いしてるの阻止するってSNSで拡散します」 

 

「何言ってんの君」

  

 僕の頭はうさぎの基本プラン『逃げる』の一択でフル稼働してた。どしたらこのピンチからうまく脱出出来んのか?

 

 ヘビ、キツネ、ワシと渡り合ってきたスキルの全てを賭けて、ちっちゃな脳ミソが出した答え。それは……

  

 ヨクワカンナクナッタカラ。トリアエズ逆切レ。 

 

「陰キャのポリ公がなアアアッ。権力振りかざして小動物イジメてんじゃねーゾ!」

 

 やってやるッ。


 小動物なめんなよ。いつでも入る(保健所)覚悟出来てんだこっちは!

 

「……とにかく、来なさい」

 

 ざさッ! 

 

 警官の出した右手をステップバックで躱す。反射的に耳からナイフを抜こーとした瞬間、

  

 ふわっ……と。

  

 後ろからよく知ってる手で抱きかかえられた。 

 

「スイマッセーン。うちの子が外、出ちゃったみたいでぇ~」

  

 リンだ!

 

 部屋着のまま来てくれてた。髪の毛ボッサボサ。

  

「あ、あなたのペット? どちらにお住まいで?」

  

「そこのマンションです。501号室。確認します?」

  

 リンの慌てて来た感じ見て警官は納得したみたい。

 

「気をつけて管理して下さい」とか言って。自転車乗って帰ってく。

  

 無言で、警官の後ろ姿を見てるリンと僕。

  

 お使いが出来なかった申し訳なさと警官に対する怒りとで、僕はぷるぷる震えてた。

  

 リンはポッケからスマホを取り出すと 

 

「ベランダからね。武器的なモノ持ってます? のとこまで撮ったから。職質動画で晒すかな~」

  

 悪そーな顔で微笑みながら僕を覗き込む。

  

 目の下にクマが出来てる。

  

 ぎゅうう、てリンの部屋着の袖握ったら何か涙が出てきた。後から後から涙が出てきた。

 

「泣かなくていいよ、ウサ」

 

 リンは袖で涙を拭いてくれて。こう言ったんだ。

 

「行ってらっしゃい」

 

 あ、行くんだ。

 

 

 

 

それではまた……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ