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貧乏男子が、お嬢様女子を好きになったケース

作者: MOZUKU

私、高校生の鈴城(すずしろ)ひよりと申します。

鈴城コーポレーションという化粧品会社の社長の一人娘でございまして、まぁ、俗に言う金持ちのお嬢様といったところでしょうか。

両親共に頭脳明晰、容姿端麗でございますので、生まれた私も必然的にスペック高めでございます。具体的に言えば普通科高校でテスト勉強などせずに常に一番の学力、七ヶ国語は喋れますし、スポーツも人並み以上には出来ます。容姿は母がフランス人ですので金髪碧眼でパッチリとした目をした美形で、発育も良く程よく胸も膨らんでおります・・・あぁ、自慢ではありませんよ、ただ謙遜と自虐は大嫌いでして、厳然たる事実を話したまでのこと、仮に自分の出来が悪く、顔が不細工で、体が貧相ならば包み隠さず話していたことでしょう。

と、私の話はここまでにして、本題の話を致しましょう。

皆さん、無謀という言葉を知っていますか?

私は知っています。無論、物心着いた時から。

ただより明確に実態件を経て、より深く知ったのは今ですわね。

「鈴城ひよりさん好きです。」

私のような令嬢を体育館裏に呼び出し想いを告げた男が一人、その名は草川(くさがわ) 克己(かつみ)、同じクラスメートの男の子ですわ。

まぁ、よくもいけしゃあしゃあと告白なんて決めやがりましたわね。この野郎。

まず、一般的に考えてお金持ちの令嬢に告白すると言うのはハードルが高いでしょうに、尚且つこの男の家は貧乏。生活保護を受けるレベルに生活が困窮していると聞いておりますわ。

私とは価値観も違うでしょうに、何故この男は私に告白してきたのでしょう?

色々と私が考えていると、草川は更にこう続けてきましたわ。

「友達を前提として僕を認知してください。」

「はい?」

結婚を前提に付き合っては割りと聞きますが、その二段階程下の言い回しは中々聞かないですわね。これって、もしかして私はバカにされてるのかしら?なら、この鈴城ひより、僭越ながら怒らせていただきますわ。

「ふざけるんじゃないですの!!この貧乏男子が!!何が認知ですか!!好きと言っておいて控えめにも程がありますわ!!私を舐めるのも大概にしなさいな!!」

ふぅ、久しぶりに大きな声を出しましたの。草川も大分ビビってるみたいだし、これなら、もうふざけたことは言わないでしょう。

「ご、ごめんなさい。」

「いいですわよ、もう。それでは用が済んだなら私は帰らせて頂きますわよ。」

「い、いやちょっと待ってください。」

意外にも食い下がりますわね。

「まだ何か?」

「今日、ウチに来ませんか?」

「はっ?」

この男は頭がおかしいんじゃ無いかしら?どうして私がこの男の家に行かないといけないのかしら?

「全く意味が分からないのだけど、説明してもらえるかしら?」

「鈴城さんと仲良くなりたいので、まず僕のことをよく知って貰いたいんです。」

「あらそう、別に私は知りたくないわ。さよなら。」

「ま、待ってください!!」

まだ粘るか、まだ粘るのか草川。何処からその粘り強さがやってくるのかしら?そろそろ、うっとおしくなってきましたわ。

「今日は御馳走が用意できます!!鈴城さんをおもてなし出来るんです!!」

御馳走?この世界のグルメを食べ尽くした感のある私を御馳走で、もてなしてくれるというのかしら?この身の程知らずのこんこんちきが。

まぁ、良いわ。話だけでも聞いてみましょう。それからでも罵声を浴びせるのは遅くない。

「御馳走とは何ですの?」

「はい、水道水です。」

「す、水道水?」

水道水というワードを聞いて、私の頭はフリーズ。あれは飲み物じゃ無いでしょう。

「月始めだから、まだ家の水道から水道水が出るんですよ。月末だと水止められてるからラッキーでした。鈴城さんは特別に飲み放題で良いですよ♪」

これを聞いて「やったー!!飲み放題だぁ!!」とガッツポーズを取るようなことがあれば、それは私の気が触れているのでしょう。というか水道水って止められるものなの?知らなかったわ。

ここまで生活水準が違うと驚きでパニック障害でも起こしそうですわ。それにしても、この男は私の一体何処に惚れたのかしら?単純にお金持ちだから逆玉狙い?それとも美人だから付き合ったら箔が付くとでも思ったのかしら?どちらにせよ、唾を吐き捨てたいほど醜悪ですわね。・・・一応聞いてみましょうかね。

「アナタ、どうして私のことが好きになったの?」

「えっ、毎日教室の花に水をあげたり、バスで年輩の方に席を譲ったり、デパートで迷子のために一緒にお母さんを探してあげたり、老人会の人の為に月1でヴァイオリンのコンサートを開いたりして、優しい人だなぁと思って。気付いたら目で追うようになってました。」

「くっ!!」

ま、まさかの内面とは!!駄目よひより!!この程度で胸をキュンキュンさせたら!!鈴城家の長女としてチョロい女になるわけには・・・。

「鈴城さん、どうしたの?顔赤いよ?」

「ね、熱があるのですわ!!体調が優れませんの!!もう帰らせてもらいますわ!!」

「あっ、そうなの?じゃあお大事に。」

私は体調が悪いと言っておきながら、足早にその場を後にしようとしますの。けど、このままでは無様過ぎると思いましたので、ある程度まで行ったところで振り返り、こう言ってやりましたの。

「近々、アナタの家を訪問してやりますから、カルキ臭い水を用意して待ってなさい!!」

「えっ、あっ、はいっ!!」

・・・捨て台詞はこれで良かったのかしら?





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― 新着の感想 ―
[良い点] 自分のハイスペックぶりを正しく自覚している御嬢様の独白が、潔い感じがして良いですね。 ハッキリ明言してくれるので、正々堂々とした好感が持てます。 そうした正々堂々とした潔さも、草川君の琴線…
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