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第二話

 どこに連れてこられるかと思ったら、ここだったのね。私は側の黒いゆったりとした椅子に荷物を置いて、ぐったりとした。

「まーっさか、一緒の部屋だなんて思いもしなかったのよね」

 二段ベットの上にどかどかと荷物を置いて、ミルフィちゃんは、はしごを登る。

「でも、なんでわかったの? 」

 聞いてみると、ミルフィちゃんは頬を持ち上げていかにもとした顔で私を指差した。なに、と思ったのも束の間あだという間に文字がさの指先に浮かび横に羅列を作っていく。

「ああ、伝達魔法(でんたつまほう)! 」

 伝達魔法は魔法高校時代に習った魔法で生活の基礎に使われる。指で教わりたいものを念じながら空間を辿ると、例えばその先に本があればその内容の羅列ができる。力がある人だと、ミルフィちゃんみたいに人の情報まで漏れるという少し厄介な魔法だけど基本は表面のメカニズムだけで、それ以上深くまで辿れるのはほぼわずかに等しいから気にしなくてよろしいと思われる。


「ほら、早く身支度整えなきゃ。うちのクラスの先生、めちゃくちゃ怒ると怖いんだって」

「ひぇ、それは早くしなくちゃだね」

 ということで、私たちは早々に家から持ってきた荷物をタンスやクローゼットにしまって身支度を終えた。

 カルジュアム高校の校則第一の寮制度の中にはいくつか項目がありその一つは年に一度しか家に帰れないということだ。家に大家族を持つ私はとても寂しいけれど、仕方がない。

「よし、終わったところだし」

 ミルフィちゃんの隣で私は、空腹で腹の虫がたくさん鳴っていた。ミルフィちゃん少しため息をついて笑って、さぁ行くかと私を連れて歩いた。指先で空気を辿ると、食堂との二文字。

 カルジュアム大学校の食堂、どんなところなんだろう。




 木製の螺旋階段(らせんかいだん)が続いた。クチナシの実をくり抜いて使ったランプがいくつも手すりに扱われていた。その実は赤く淡く原型を留めて灯っていた。階段をやっとの思いで下りると、食堂の景色が一面に広がった。薄暗い中を天井の大きなシャンデリアが明るく照らしている。

「え、なにこんな埃っぽい所に興奮してるの? 」

 ミルフィちゃんが信じられないという顔で私を見るので目尻を下げると、両肩を上げて私を連れて歩いた。しっかりと握られた手を見ると、やっぱり面倒見の良いのだとなぜだか落ち着いた気分になった。

 席についた瞬間、ジャジャジャーンと鈴の鳴る音がする。その方を見ると、キッチンの中から丸太りのおじさんが出てきて古ぼけた大きな鈴をごつごつとした手の平で叩いている。

「いやぁ、びっくりした何よあのおじさん」

「ミルフィちゃんそんなこと言ったら」

 こんな遠い所で大丈夫よ、とミルフィちゃんは長い石のテーブルに肘をついておじさんの方を向いている。たしかに長いテーブルの奥の隅っこだけど。

 賑わっている中で、私は密かにあの男の先輩を探していた。伝達魔法をあの時、使えばよかったと後悔している。確かに、あの時は魔法大学校についたばかりで頭が混乱してたから冷静にそんなことできなかったと言えばそうだけれど。

「あ、そういえば研究室とか入るの」

 鈴を鳴らしてからしばらく経っているので退屈したのかミルフィちゃんは私に世間話を持ちかけてきた。

「研究室! 」

 気付いたら身を乗り出していた。実のところ私は研究室と言う場所に入りたくてこの大学校に入ったのだ。この大学校は魔学に盛んな学校で国に貢献しているらしいとかなんとか。深い事情は明らかにされていないことが不可解だけどれど、そこが逆にロマン。

「入るよ!入りたい! 」

「へぇ、そうなんだ。そしたら・・・・・・」

 良いところへ、ベルが鳴った。


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