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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

留守番電話

作者: 翠泉

 留守番電話が一件残っています。

 再生しますか?




 もしもし。

 こんな時間に電話なんてしちゃってごめんね。

 私も忙しくて仕方がなかったの。


 今日は誕生日おめでとう。

 パーティーは楽しかったかしら?

 その場に私もいられたらよかったのだけど……

 残念に思っているわ。


 貴方はもう私のことなんて何とも思っていないかもしれない。

 いえ、むしろ目障りに感じているかもしれないわね。

 非常に悔しいのだけど……

 これが現実なんだってわかってるつもり。


 今は一人で夜道を歩いているの。

 寂しくない!と強がってみるけれど、やっぱり駄目なの。

 隣には貴方がいて欲しかったのに……

 どうしていてくれなかったの?


 貴方が傷ついた時にはいつも私が止血してあげたのに。

 何故、私が傷ついたあの日は、離れていってしまったの?

 あれからずっとずっと考えているけど答えが出ないの。

 いえ、本当は気付いてて見て見ぬふりをしているだけなのかも……

 私にはもうわからないの……


 もう貴方のことを忘れようと思ってるの。

 でもね、全然頭から離れてくれないのよ!

 あの日はあんなに簡単に私を捨てたくせに!

 何で消えてくれないの!




 取り乱しちゃってごめんね。

 決して貴方を責めるつもりはなかったの。

 未だに割り切れない私に嫌気がさしてるのかもしれないわ……

 でも、気持ちの整理は少しずつだけどついてきてるのよ。


 こうして一歩一歩夜道を歩くように、先を見据えて歩き始める時だと思い始めたの。

 貴方のことを恨む日もあったけれど、それはきっと違うのよね。

 いくら考えてもやっぱり愛しているのよ。


 あの日、遠ざかる貴方を止める事ができなかった。

 でも、あの時、追いかけることをしなかった私を後悔してるのかもしれない。

 追いかけて拒絶されたらきっと立ち上がることが出来ないから……

 私は自分自身が可愛くて、ただただ保守に走ったの……


 醜い私をどうか許してほしいの。

 酷く歪んでしまった私のことをもう一度愛して欲しいのよ。

 私のわがままだと理解しているけれど……

 もう一度あの頃に戻りたい。




 こんな身勝手な言葉ばかりを残すことになってごめんなさい。

 今日電話したのは貴方に伝えたいことがあったからなのよ。

 私、旅に出ようと思っているの。

 それで私の願いは叶うのだから。


 私がどこにいるか当てることができる?

 今の貴方では無理でしょうけど……

 この音が聞こえるかしら?

 今日は風がよく吹いているわ。


 心地よく感じるわよ。

 貴方は見てないかもしれないけれど、星空もとても綺麗よ。

 この人生で一番かもしれないわ。

 旅立つ私を祝福してくれているのかもね。


 こうやって前向きな気持ちに慣れているのも、きっと貴方のおかげ……

 本当にありがとう。

 心から感謝しているわ。


 そろそろ出立の時間だわ。

 すぐに会えると思うけれど、私にとっては少しの別れよ。

 その時にはまた私のことを愛してね……

 それじゃあ、また会いましょう。




 ビューーー   ビューーー   ビューーー


 グシャッ……


 ツー、ツー、ツー、ツー、ツー




 モ  ウ  ハ  ナ  サ  ナ  イ  カ  ラ

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