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20)ふたりの勇者



 2週間後。


 王都の東側、湖と小山を超えたところに、トゥムサルの町はあった。


 ここには、中規模の洞窟型ダンジョンがある。

 中階層くらいまでは、魔物の強さもさほどではなく、標準的なダンジョンだった。


 トゥムサルの領主は名君と評判で、町は比較的、治安もよく、ダンジョンがもたらす資源も相まって、賑わっていた。


 冒険者ギルドも、王都に負けないほど立派な施設だった。



「君、ひとりでダンジョンに潜ってるんだろ?」


 シュンが、冒険者ギルドのボードに貼られた依頼票を見ていると、後ろから声をかけられた。


「え? ああ・・」


 ――見た顔だな。よく一階の食堂にいる連中か。


 4人連れのパーティだった。

 前衛、後裔、魔法使いに、索敵といったところか。

 女性がふたり居るのは、索敵か魔法使いだろう、とシュンは推測した。

 10代後半から、せいぜい20代始めくらいの年齢。

 ありふれた、ごく平均的なパーティだった。


「ひとりじゃ、なにかと不便でしょ。

 うちのパーティに加わらない?」

 と少女が言う。

 赤茶色の艶やかな髪をポニーテイルに縛り、緑色の丸っこい目をしている。かなり可愛い。シュンとさほど歳が変わらなく見える。


 もうひとりの女性は、少女よりいくつか年上のようだ。金色の癖毛に薄い水色の目。内気そうな顔をしている。太ってる・・というほどではないが、少しボリュームのある身体をしている。豊かな胸に、つい目が行く。


 男の方は、ふたりとも、背が高く、体格もかなり良い。

 厳つい顔をした方が、大剣を担いで盾も立派なのを持っている、盾役なのだろう。

 もうひとりは、愛敬のある美男で、ショートソードを2本腰に差している。二刀流なのかもしれない。最初にシュンに声をかけてきたのは、この男だった。


「いや、俺、今のところ、ひとりで困ってないから」

 シュンは、答えた。


「え~、そうなの?

 でも、パーティの方が効率いいわよ。荷物番とか、野営の準備するときとか、背後からの敵が心配なときとか」


「うん。大丈夫。

 それに、君たち、バランス良さそうなパーティだから、追加メンバーは要らないんじゃないか」


「まぁね、中階層くらいまではね。

 でも、もっと潜ると、この人数だと、ちょっと足りないのよ」


「あの・・ここで立ち話してると、邪魔になるみたいよ」

 と、金髪癖毛の方の女性が、周りの様子を見ながら言う。


「良ければ、昼飯でも一緒に食うか?」

 最初に声をかけてきた二刀流の男が、ギルド一階の食堂を顎でしゃくって示した。



◇◇◇◇◇



 4人組との賑やかな食事のあと、シュンは、宿に戻った。

 夕べは、ダンジョンの中で野営したので、昨日の朝から宿には戻っていなかった。

 宿の宿泊費は、前払いしてある。


 シュンは、汗で湿気た服を脱ぐと、宿で貰った湯で顔を洗い、身体を拭いた。浄化魔法で済ませるより、やはり気持ちが良い。シャワーを浴びたいが、安宿には風呂もない。最後に足を洗っていると、


『けっきょく、連中と、パーティ組むんだね』

 と、キアゲハが言う。


「いや、まだ決めてない」

 シュンは、足を拭き終わると、「ふぅ」と息をついて、裸のまま、ベッドに寝転がった。


『でも、明日、一緒に出かけるんだろう?』


「武器とか、靴とか、良い店を紹介してもらうだけだよ。

 パーティの方は、保留だな。

 あまり、力、見せたくないし。思い切り動けないのは、窮屈だから」


『でも、連中は、もうシュンは、パーティの一員みたいに思ってるみたいだったよ』


「うー・・ん。はっきり応えなかったからかな」


『けっこう、しつこかったな』


「しょうがないよ。

 やっぱ、4人で中階層以上に潜るのは、無理があるんだろう」


『より上を目指すならね・・』


「俺は、少しの間くらいなら、パーティに入ってもいいかな、って思ってる」


『ふうん』


「気が進まないみたいだね、父さん」


『あのパーティは、ちょっと信用できない、かな』


「どうして?」


『彼らを見たから。

 メンバーに、人殺しが居る』


「えー・・。マジ?」

 シュンは、ベッドから顔を上げた。


『うん』


「そんなの判るの? ひとの過去が?」


『過去が見えるのとは違う。

 はっきりとではなく。なんとなく、わかる』


「なんだ、その程度か。

 でも、どういう風に判るのさ? どこかに『人殺し』とか表示されるわけ?」

 シュンは、ベッドに座り、シャツを羽織った。


『僕の、例のスキルで覗いた結果。

 「人殺し」のような暗闇が、刻まれてる』


「なんか、はっきりしないなぁ。

 こんな危ない世界なんだから、人が死ぬようなことに巻き込まれるなんて、珍しくないだろう」


『そういう生易しいものじゃないよ』


「まぁ、一応、気をつけとくよ。

 パーティでダンジョンに潜るのを、ちょっと経験してみたいだけだし」


『判った』



◇◇◇◇◇



 ――なんか、変だなぁ。


 ハルカは、トゥムサルの宿のベッドで目を覚ましたときから、違和感を感じていた。


 ドゥイッチの森で、アロンゾに会ってから、10日ほどが過ぎていた。

 昨晩、コダナートからトゥムサルに移った。


 コダナートの、廃校地下にあるダンジョンは、アンデットがやたら多く、疲れた。

 切り斃す度に、腐った腐肉や臭い体液が飛び散った。

 コダナートのダンジョンは、「アンティークなお宝」「歴史的価値のある遺物」が手に入ると聞いていたので、掘り出し物が見つかるまで頑張ろうと思っていたのだが、パーティならいざ知らず、ひとりでアンデットと闘うのは地味に精神的に堪える。


 4日ほどで、這々の体で逃げ出した。


 おかげで、夕べは疲れていたので、気付かなかった。


「なんだろう? この懐かしい感じ・・」


 その、「懐かしい感じ」は、指向性を持っている気がした。


 ――懐かしさに指向性がある?


 ハルカは、しばし考え、さらに、感じている違和感を、ゆるりと辿ってみた。


 ――あ、なるほどね。どこかに、「懐かしさ」の原因があるんだわ。

 これが、アロンゾの言っていた、「同じ異世界人の、波動を感じる」という現象か。


 ――さて、どうしよう?


 アロンゾは信頼できる、とハルカは思っていた。

 根拠はない。ただ、第六感がそう告げている。

 協力することはやぶさかではない。

 けれど、肝心のシュン本人が、どう考えるかが問題だろう・・とハルカは思う。


 もしも、自分だったら、やはり、自らの意思を第一に考えて欲しいところだ。


 ――ゆえに、まぁ、なるようになれ。


 しばらく、放っておくことにした。



◇◇◇◇◇



 シュンは、初めてパーティでダンジョンに潜った。

 セオドアたちと炎空の塔のダンジョンには行ったが、あれは、「パーティで行った」数には入れられないだろう。


 リイナたちは賑やかだった。


 宿の堅い寝台のグチから、コウモリが見た目より旨いとか、髪をしばる革紐のことまで、女ふたりで延々としゃべっている。

 男ふたりは、鼻歌交じりに、襲ってくる小型の魔物を嬲り殺しにしている。


 ――なんか、部活のノリだな。


 シュンは、慣れない雰囲気に戸惑う。

 楽しいけれど、ダンジョンで、こんなに賑やかでいいのかとも思う。


 ――パーティって、こんなもんなのかな。


『いや。ちょっと、特殊だろ』


 ――そうかな。


 食事は、携帯食で済ませ、ようやく野宿する段になり、シュンは、「誰とテントに入る?」と尋ねられた。

 シュンは、

「俺は、ひとりで寝袋で寝るからいいよ」

 と応えた。


 もとより、さして親しくもない人間と一緒に寝るつもりはなかったが、ふつう、女性はふたりでテントを使い、男性3人で寝るものじゃないか。

 クタクタだったので、追求するのも面倒だった。


 シュンは、さっさと、岩の陰に陣取り、結界を張って眠りについた。

 キアゲハが寝ずの番をしてくれるので、これで十分だった。

 今日は疲れた。

 4人は、あまり役に立たなかったのだ。

 シュンがひとりで剣をふるい、4人は、もっぱら、魔石の拾い役だ。

 分け前は、同じ5分の1。


 ――効率で言うと、パーティ組むより、ひとりの方がいいな。


 と、何度も思ってしまい、そのたびに、『だろ』とキアゲハに言われた。


 シュンが父に、うん、と応えなかったのは、自分からパーティについて行く、と選んだことへの意地だった。



◇◇◇◇◇



 ハルカが、シュンの気配に気づいた2日後。


 昨夜は、ダンジョンで夜を明かした、明くる早朝。

 ハルカは、宿に戻る前にギルドに寄った。


「クラリスさん、また、ずいぶんレアな奴を、朝っぱらから持ってきましたねぇ」


 眠そうな目の受付係の若い男は、「はぁ」とため息をついた。


「苦労したわ」とハルカ。


「苦労したように見えないんですよねぇ」


 カウンターは雷水牛の切り落とされた角で占領されていた。角はコレクターなら垂涎ものの美しく見事なものだった。その他の部分は、ハルカは、肉の味見と、錬金術の素材にするために空間魔法機能付きの袋にしまい込んでいた。


「状態もいいでしょ。黒焦げにしないように気をつけたのよ」


「ええ、極上です」


 最近、よく喋るようになったギルドの受付係と立ち話していると、またあの「懐かしい感じ」が背後から感じられた。

 ハルカが振り返ると、黒髪の少年が、数人の男女と歩いている。

 彼らは、ギルドの食堂からエントランスを抜けて出て行くところだった。


 ――彼が二人目の勇者・・。


「どうされました? クラリスさん?」


「知人に似た人が居たの。

 買い取り価格は、すぐには判らないんでしょ? また来るわね」


「ええ。これは、受付札です」


 ハルカは、札を受け取るとシュンを追った。



◇◇◇



 ハルカは、ダンジョンまで、シュンたちの後をつけた。

 2階層まで距離を置いて様子を見ていたが、ダンジョンの中に居た羽虫を捕らえ、ティムすると、金髪癖毛の少女の背負い袋に留まらせた。


 ――これでいいわ。


 追跡は羽虫に任せて、いったん、宿に帰って休んだ。



◇◇◇



 明くる日。


 ハルカは、じゃっかん、うんざりしながらも、シュンたちの後を付けていた。


 シュンと一緒に居るのは、男女2人ずつの4人。


 ――なんか、雰囲気の悪い連中よね。


 ハルカは、十分距離を置いて、一行の様子を伺いながら、見失わないように追っていたが、遠目にも、シュンだけが働いて、4人がピクニック気分で遊んでいるのが判る。



 10階層は、やたら広々とした洞窟だった。

 天井は2,3階建ての建物くらいの高さがある。

 その丈高い、大広間のような洞窟の隅々に、クモが居る。

 壁は、鉄のように固く、ごつごつとしている。窪みも多く、その窪み一つ一つに、クモが潜んで居る。


 本道の洞窟の壁には、横道のような脇穴が不規則に空いていて、それぞれの横穴は大きさも深さも様々だった。


「あの横穴にも、ときどき、お宝が転がってたりするんだ」

 とジャックが言う。


「私の短杖も、その一つで拾ったのよ。

 まぁ、誰か、クモに襲われて死んだひとのかもしれないけど。

 黒檀で出来てて、なかなかの値打ちものなのよ」

 リイナが自慢げに言う。


「それで、手分けして、横穴を見ていこうかと思うんだけどさ。

 リイナとビアンカは、あの奥の奴な。

 俺とペイジは、こちら側の壁を。

 シュンは、あのデカい横穴の索敵を頼めるか」


「判った」


 ジャックたちが、各々、横穴に散っていくのと同時に、シュンは、本道の壁にぽかりと空いた洞窟に歩を進めた。


 穴に踏み込んだとたん、『毒ガスだな・・』と、キアゲハが言う。


 ――なんの毒だろ。


『クモがうじゃうじゃいる洞窟に毒が蔓延してるんだから、大毒蜘蛛だろ』


 ――毒耐性だけで、防げるかな。


『たかが10階層の魔物だから、余裕だよ』


 ――でも、あの連中には、無理かもな。


『クモの巣窟になんか、どうせ大したものはないよ』


 ――一応、確かめる。


 クモを払いながら進み、洞窟の最奥を覗いた。

 大量のクモが蠢いている。


 ――うわぁ、キモ。


 洞窟の奥はひときわ広い空間になっていた。シュンは、慎重に顔をのぞかせて一渡り見回す。

 クモの巣が張り巡らされ、白っぽい繭のようなものが、大量に吊り下がっている。

 宝箱のようなものは無さそうだ。


『帰ろ』


 ――うん。



 シュンが、横穴の出口に近づくと、4人が、なにか、言い争いをしていた。


「だから、なんであんな洞窟にやるのよ」

 とリイナ。


「あとで拾いに行けばいいだろ」

 とペイジ。


「誰が行くのよ」


 ――なにを言い争ってるんだろ・・。

 と、シュンが考えてると、


『シュンの荷物を拾いに行く相談さ』

 とキアゲハ。


 ――どういうこと?


『死んだと思われてるみたい』


 ――は・・?


『ホントに、気分の悪い連中だな』

 キアゲハの声が、怒気を孕んでいる。


「あ、シュン・・」

 リイナが、横穴の端に居るシュンに気付いた。


「良かった、心配したんだぜ、なかなか戻って来ないから」

 とジャック。


 リイナたちは、「心配した」と言いながらも、毒の漏れてくる洞窟の横穴の方へは近づこうとしなかった。知っていたのだ。


『白々しいな。

 もう、帰ろう、シュン。

 こいつら、思ってたより、さらにずっと不愉快だ』


 ――どう思ってたんだよ・・。


 シュンは、酷く疲れてきた。

 なぜ死んだと思われていたのか、だんだん、判って来た。


「おい、待てよ」

 ペイジの声音が胡乱げになってきた。


 シュンは、無視して、洞窟の端を歩いて出口に向かった。

 洞窟の本道はだだっ広く、リイナたちは、毒を避けるために反対の端にたむろしていたので、なんら邪魔にならなかった。近づく気もしなかった。

 リイナたち4人は、シュンを避けるように、さらに反対の端に寄った・・と、ふいに彼らの空気が、殺気に変わった。


 いきなりペイジがナイフを投げつけてきた。


 キアゲハが結界を張るのと、誰かの剣がナイフを叩き落とすのは、同時だった。


 シュンとリイナたちの間に、黒髪の少女が、猫科の獣のように、しなやかに舞い降りた。


「あなた、シュンでしょ?」

 見知らぬ少女が、シュンを、ジャックたちから護るように立ち、背を向けたまま言った。


「え・・どうして、名前を?」


『シュン、彼女・・。僕らと同じ、異世界人だ』


 キアゲハがシュンに告げた。


 ――え・・。


 少女は、ペイジがさらに投擲してきたナイフを、ガキンっと剣で払い落とす。

 力任せに投げられたナイフには、明かな殺意が込められている。

 4人が迂闊に近づいて来ないのは、シュンの強さを知っているからだろう。


「ぼんやりしていると危ないわよ。

 それとも、彼らに殺されたいの?

 ・・そうしたら、邪魔・・しないほうがいいの、かしら・・?」


 黒髪の少女が首をかしげて言う。


「い、いや、殺されたくはない・・」


「でしょ」

 少女は可憐に微笑んだ。

 無邪気に微笑んだまま、片手で、飛んできたリイナの炎撃とジャックの槍を払い除け、同時に、雷魔法・雷嵐を発動、辺り一面を雷鳴と稲光の渦に巻き込んだ。


 リイナたち4人は、雷に打たれながら、ボロ屑のように、洞窟の横穴の奥、大毒蜘蛛の巣窟の方へ飛んでいった。


「帰りましょ」

 シュンは、手招きされるままに、彼女の後に従った。



◇◇◇◇◇



 数時間後。


 ハルカとシュンは、シュンが泊まっている宿の一階、食堂に落ち着いていた。

 ダンジョンから、ずっと一緒に歩いてきて、素材をギルドに卸したあと、ハルカに、「ちょっと休みましょ」と言われ、ここまで移動した。


「あのね、もしかして、落ち込んでるの?」

 と、ハルカがシュンに尋ねた。


「・・うん。さすがに」


 思えば、危ないDQNどもに自ら関わることになったのは、二度目だった。


 ――俺、ぜんぜん、学習できてないんだな。


 以前との違いは、シュンが、やろうと思えば、連中を瞬殺できたことか。

 知り合いを斃すのは躊躇するが、ハルカが代わりにやってくれた。


 店のウエイターが注文を取りに来た。

「ここ、なにが美味しいの?」

 とハルカ。


 まだ昼には早いけれど、小腹が空いていた。

 あんなことがあった割に、食欲には影響がないようだった。


「えっと・・。クモの唐揚げが、香ばしくて美味しかったけど・・。

 あと、山豚の煮込み」


「じゃ、それ。ふたりぶん」


 店員がテーブルを離れると、

「ねぇ、あの子たちと、パーティ、組んでたの?」

 ハルカは聞いた。


「うん。まだ、ダンジョンに一緒に行ったのは、2回目だったけど」


「良かったわね、たった2回目で露見して」


「まぁ・・そうだね、たしかに。

 でも、忠告されてたのにな・・」


「あいつらが、危ないって? 忠告されてたの?」


「うん。

 でも、誰かとパーティ組むって、けっこう楽しくて、さ」


 シュンは、ハルカは話しやすいな、と思った。今日、会ったばかりだというのに、一緒に居ると落ち着く。

 同じ異世界人だからだろうか。


「じゃぁ、アロンゾと組めばいいのに」


「え? アロンゾと?」


「そうよ。彼、強そうよ」


「あ、それは、知ってる。

 でも、ハルカ、アロンゾを知ってるの?」


「この間、会ったわ。

 シュンのこと、心配してるって。もし会ったら教えてくれって、言われたの。

 あ、そうだ。

 シュンのこと、アロンゾに報せてもいい?」


「え・・」


「嫌なの?

 彼、信頼できそうよ」


「それは。たしかに、信頼はしてるけど」


「ちょっと会って、話してあげたら良いと思うわよ」


「そう・・かな?」

 ――アロンゾ、怒ってないかな。勝手に出て来たこと・・。


「私の第六感。当たるのよ。

 後悔させないわ」


「うん・・。判った」


 それから、ハルカは、魔道具らしきものに、小声で話していた。

 小さな声だけれど、ハルカは隠すつもりもないらしく、会話は聞き取れた。

 シュンと会えたことを、アロンゾに教えている。


 ――良かったのかな。


『良かったと思うよ』

 キアゲハの声が、嬉しそうだった。





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