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ギルス戦記  作者: Caramelと愉快なおんj民達
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プロローグ

かつて人は弱者であった。


地を速く駆けることも出来ず、その力はただただ貧弱である。そして簡単に同胞を増やすことさえ出来ない。

そんな人は、力ある獣人によって支配されていた。

人はそれに抗うことも出来ず、ただ道具として使われていた。

獣人は人と言う知のある道具を手に入れたことで、更なる発展を遂げた。

更なる土地を切り開き、領域を広め、新たな文化をも生み出した。

そして獣人は世界を支配者となったのだ。



獣人が王国を築き世界の支配者となってから早4世紀が過ぎた王国暦422年、王国の辺境にある農園で、とある奴隷の男は自由と平等を求め、仲間の奴隷と共に集団で逃亡を決行した。たった十数人で始まった逃亡であったものの、西へ西へと逃げていくうちに更なる奴隷が参加し、獣国の領域から逃れる頃には数千人にまで膨れ上がっていた。

そして彼らは自由と平等を求め、未知なる土地へと踏み込んだのだ。

それは長く苦しい道のりであった。


西へ進み深い森を抜けるとそこには険しい山脈がまるで壁の様に存在していた。その頂上に、多大なる同胞の犠牲の元彼らは辿り着く。

そこから見えた景色は幾つもの山脈、そしてその先に広がる新たな大地であった。

人は希望の大地へ向けて幾つもの山を越えていった。その間飢えや疲労、寒さが彼らを襲い続けた。


そして半分以上の同胞が犠牲となる頃、人はようやく希望の大地へとたどり着いたのだ。

温かい気候が彼らを包み、幾つもの果物や穀物が彼らの腹を満たし、滾々と湧き出す美しい水が彼らの喉を潤したのだ。

逃亡者を率いた男、ヘパイストスは自由と平等を掲げた人の国、フラテルニア共和国の建国を宣言し、人類が新たな一歩を踏み出したこの年を人類暦元年として定めた。

こうして、人は希望の地で新たな生活を始めたのだ。



人類暦237年、森を切り開いていたある女が不思議な岩の塊を見つけて村に持ち帰った。淡く光るその摩訶不思議な石の噂はあっという間にフラテルニアの首都エガリテにまで広がり、元老院の指示によってその石は当時もっとも名高い技師かつ将軍であったテオドールという男に預けられた。彼はその摩訶不思議な石に非常に興味を持ち、隅々まで調べつくした。その結果、鉄などの金属にだけ伝わる謎の力がその石からほぼ無限に放出されている事が分かった。これに非常に驚いたテオドールはこの石を魔石と名付けた。さらに当時作っていたからくり人形の動力に出来ないか考え、幾度も試行錯誤した後に無限に動くからくり人形を作り上げ、元老院にて披露した。


これを見た元老院議員らは軍事転用できないか考え、人が乗れるほどの大きさのからくり人形を作るようテオドールに命じた。

彼は快諾し、更なる魔石を求めて最初の魔石が見つかった森を訪れ、調査を行った。その結果、森の地下には巨大な魔石の鉱脈があることが判明し、国の支援の元採掘を開始する。

そこで掘り出された更なる魔石を用いて、テオドールは人が乗れるからくり人形、後にアルマディルアと呼ばれるそれを作り上げ、元老院にて再び披露した。


元老院議員は、かつて自分たちを支配していたと聞かされた獣人よりも遥かに強いであろうその力にさらに驚かされた。そして同時に、これによってフラテルニアの悲願である全人類の開放を成し遂げる事が出来るのではないかと確信した。

人類暦240年、人類は遂に獣人を越える力を手に入れたのだ。



そして人類暦251年、アルマディルアによって武装したフラテルニア軍はかつて多くの同胞が命を落とした道のりを辿り王国、獣人が支配する地へと到達、人類の開放を目的とした侵攻を開始した。

アルマディルアを始めてみた獣人は驚いたのち、恐怖の底へと叩き落された。

初めて自分たちが敵わない力を持つ敵が現れたのだ。


謎の軍による襲撃の知らせはすぐに王国の首都ブリタリアに伝わり、直ちに討伐軍が編成された。同時に、奇妙な噂が流れた。銀色の体が開いたと思えば中から人が現れたというのだ。そしてその噂が確信となったのは、謎の軍勢から送られてきた一枚の文書であった。

そこにはこう書かれていた。

「我らは人類の国フラテルニアの軍である。直ちに人類を解放せよ。さもなければ貴国を占領する。1週間以内に返答が無い場合、貴国は要求を拒否したと判断し、即時侵攻を開始する」

この明らかに上から面の文章に王は激怒し、すぐに3万から成る討伐軍を派遣しフラテルニア軍を殲滅するよう命令した。

フラテルニア軍はたった1万ほどの軍。勝敗は決したと思われた。

しかし驚くべきことに、アルマディルアの生みの親であり解放軍の指揮官でもあるテオドールがアルマディルアの特徴、守りが堅く、機動力の高い点を生かした見事な戦術を披露し、数の差を覆して王国軍を殲滅する事に成功する。

これに驚いた王は更なる討伐軍を派遣するも、再び少数の敵に敗北する事になる。それだけでなく、各地で人の奴隷による反乱が多発し、王国は次々と占領されていった。

そうして侵攻開始から1年ほど経った王国暦675年、人類暦252年に獣人は遂に人に屈服し、人類の開放及び領土の一部割譲の要求を呑んだ。こうして遂に全人類が自由の身になったのだ。



人類暦261年、人類解放の英雄であるテオドールが亡くなると、彼を神格化し新たな宗教を作ろうとする動きがみられ、国民の多くがこの考えに賛同した。しかしその結果待っていたのは教皇による独裁支配であった。民衆は自由を忘れ、かつてのような辛く苦しい生活を送っていた。

だが人類暦322年、かつての自由を求めてフラテルニア最南端の盆地でロジェ・マルトーという男が民衆を率いて蜂起し、地域を支配する貴族の処刑に成功する。そしてフラテルニアから独立し、かつてのモットーである自由と平等を掲げて新たにリバリテニアを建国する事を宣言した。これに対し、教皇は速やかな叛乱軍の鎮圧を命じ、10万と言う大群を派遣する。だがロジェは僅か3万の軍を率いて山岳地帯を移動中のフラテルニア軍を急襲、見事包囲殲滅に成功する。

この敗北によって教皇の威信は揺るぎ、国内では一部の貴族らが己らこそ正当な教皇であるとして独立を宣言、また民衆の叛乱が活発化し独自に支配領域を持ち始めたため、フラテルニアは幾つにも分裂することとなった。

戦国時代の始まりである。


無意味な殺し合いが始まって1世紀が経った人類暦431年。人類の幾つもの国が滅び、残りは僅か二つの国になっていた。

それは独立した貴族によって作られた国であるフライハイト教国、そして自由と平等を掲げ最初に独立したリバリテニアであった。

しかし、フライハイト教国が人類を統一するのも時間の問題と思われた。フライハイト教国はリバリテニアに比べて技術力は高く、強力なアルマディルアで武装した軍を保持していたからだ。それに加え支配領域も遥かに広く、国力の差は歴然であった。

そんなリバリテニアの名家ラングレー家にこの年、ある男の子が生まれる。

その赤ん坊はヴァレリーと名付けられた。


どうも、Caramelと申します。

気に入って頂けたらブクマや感想、評価よろしくお願いします。

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