1話目 再会(仮)は突然に
受験という人生の壁の1つを乗り越えた僕は、履きなれないローファーを履き、歩きなれない河川敷を歩き、高校へ向かった。
親の都合で中学生のときに他県へ引っ越したため、3年間で町の風景はかなり変わってしまっていた。
入学式も特に問題なく終わり、期待しているような面白いものは何1つなかった。
特に部活にも精を出すつもりは無いので先輩たちの勧誘にも耳を傾けず昇降口に向かう、向かう....はずだった。
すれ違いざまに何気なく見た彼女は、過去に1番身近にいた幼馴染みの面影が残ったまま成長した顔とそっくりそのままだった。
「栞....?」
ふと呟いた名前に反応したのか、振り返る彼女。
だが、こちらを見て数秒もしないうちに、彼女は走り出した。
というより、あきらかに逃げ出した
「おい、栞だろ?待てよ!!」
とっさに追いかける。
彼女はある教室に入っていった。
「アナタダレデスカ?ワタシシラナイデス。」
「あんた、栞だろ!?話聞いてくれよ。」
「シオリ?シラナイデスネ。トイウカ、ワタシアナタヨリトシウエナンデスケド、コウサンナンデスケドナンデケイゴツカワナインデスカ。ワタシコウサンデスヨ。コウサンッテイッテモ"降参"ジャナクテ高3デスケドネ。ワタシハコウサンナンテシマセンヨ。ハハハ」
扉を介して、大して面白くもない冗談を言って、1人で笑っている彼女と、苦笑いと少々の苛立ちを和えたような表情を顔に貼り付けた僕の構図はなんともシュールだろう。
どうしても話したくないのか、中に入れない気だ。
「.......開けないなら扉壊すぞ。」
「キブツソンカイデウッタエマスヨ。サイコウサイマデタタカッテヤル。」
扉を開け、彼女はそう言ってまたすぐ閉める。
「てか、なんでカタコトなんだよ。普通に話せよ。その前に扉開けろよ....」
「カタコトニナッテナイデスヨ。」
至極単純な疑問に、彼女はまたも扉を開けて一言だけ言い放ち閉める。
(話す時は開けてくれるんだな...それなら.....)
「いや、なってるだろ。あんた外国人か?笑」
案の定扉を開けてきた。
「ワタシガイコクジンジャナイデス。ジュンニホンジ....」
開けた瞬間に扉に手をかける。
「よし、開いた!!さぁ話聞かせてもらおうじゃねぇか。」
「ひぃぃぃ、降参します、話しますぅぅぅぅ!!!」
今思えばこれ以上に運命を感じない再会(?)をした人はいないはずだろう。
まず、彼女が何年も再会を望んでた幼馴染みとは限らないんだが.....