第8話 突然の別れ
ライラが目を覚ましたのは戦いから四日たった夕方自室のベッドであった。ライラは身体を起こしたが特に倦怠感も無くぼんやりとしながら最後に戦ったシーンを思い出していた。
頭の方も徐々に起きてくると、ふと右手に触れる感触があり見るとメアがライラの手を握ったまま椅子に座った状態でベッドに上半身のみ預ける形で寝ていた。
『もしかして、ずっといてくれたの?』
ライラは自分にかかっていた毛布をメアの身体にかけると起こさないように優しくメアの頭を撫でた。
「……ライ君、目を覚ましたの?」
「うん、ついさっきね」
メアはいろんな感情が溢れ出し涙や鼻水で顔がぐしゃぐしゃになりながらもライラの胸へと飛び付いた。
「ライぐんじんじゃゔんじゃないがどおもっだよ」
「ごめんね、心配させて。どうやらあの力を使うと三日三晩意識が戻らなくなるみたい」
メアはしばらくライラの胸の中で泣くとやがて落ち着きを取り戻した。
「お腹空いてない?」
「そういえば、少し空いてるかも」
「じゃあ私が何か作るよ。出来たら呼びに来るね」
メアは立ち上がり料理を作りに部屋を出て行った。
部屋に一人となったライラは少しだけ横になろうと思ったがあまりの静けさを不信に思いベッドから飛び跳ねてメアの元へ向かった。
「僕のお父さん、お母さんは?」
料理の準備をしていたメアは手を止めライラの方へ向き直した。
「昨日ね師匠、城に戻らないとって言って村を去って行ったの。それでおじさんとおばさんは護衛としてついて行くことになって私はライラの事を任されたの」
「……そうなんだ。何か言ってなかった?」
「うんと、ライラなら明日には目を覚ますから大丈夫よっておばさん言ってた」
「そっか、師匠は何も?」
「うん、私も昨日突然聞かされたから。最後、別れ際に会えたんだけどその時に手紙を受け取ったの。トールには個別で渡したからこの手紙は二人で読みなさいって。今読んでみる?」
「料理やっぱり手伝うよ。ご飯食べながら二人で見よう」
二人は課外授業でサバイバル訓練も受けていた為、慣れた手つきで簡単な料理を二、三品作った。お皿へ盛り付けをし食卓へ並べると三日間何も食べていないライラは急にお腹が空いてきた。
「それでは手を合わせて」
「「いただきます」」
二人はしばらく黙々と食事をとった。テーブルの上の料理が半分程までに減ったところでライラの方から切り出した。
「じゃあ手紙読んでみようよ」
「うん、じゃあそっちの椅子に移動するね」
メアは手紙を持ちライラと横並びに座って一緒に手紙が見られるよう席を移動した。
そして封を切り手紙を二人の真ん中になるようテーブルの上に置いた。
ーーライラ、メア
突然、何も言わず去ってしまって申し訳ない。
しかし、君達を教えて三年が立ち、もうこれ以上私から教える事はない位成長した姿を最後に見られて良かったと思っている。
本当はもう二、三日滞在する予定が急用により私は戻ってしまうが十五歳までは鍛錬を欠かさず行う事。そして十五歳になった時、この手紙を持って私のいるファウスト城を訪れなさい。君達にはもう少し勉強に励んでもらうよ
ランスロット・サーザンド
「また会えるんだね、師匠に」
「うん十五歳になったら行こう。ファウスト城に」
ライラとメアはいつの間にか自然と手をつないでいた。