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天に愛された少年の物語  作者: みかんちゃん
第1章 幼少期
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第7話 圧倒的な力

 ライラは平原を全速力で駆け抜け1分も立たない内に村人達と合流した。


 「皆、お待たせ」


 ライラの登場に村人は騒ついた。

 

 「こりゃ、ライラは一緒についてきちゃいかん!すぐに戻って竜に力を貰ってくるのじゃ」


 長老の言葉に口を挟んだのはライガであった。


 「長老、お言葉ですがライラは恐らく竜との契約に成功しています。髪の色も変わってますし手の紋章をご覧ください」


 長老はライガに言われライラの手の甲を手に取りまじまじと確認すると腰を抜かした。


 「おぉ、この紋章は。まさしく竜の紋章……か?こんな紋章は見た事がないがまぁ間違いはないじゃろ。皆の者よく聞くのじゃ!この村で竜使いが誕生した!宴じゃ!宴の用意じゃ!」


 歓喜の声をあげている村人達の合間を掻い潜ってトールとメアがライラの元へとやって来た。


 「やったな!それにしても来るの早過ぎ。俺たちまだ何もしてないし師匠なんて村でライラの元へ向かおうとあそこで待ってるんだぜ?」


 ライラはトールの言葉に違和感を覚える。


 「ちょっと待って。僕は村の人が竜の群れと戦闘してる間に竜と話してたんだよ?」


 「私達はここに着いたばかりよ?ほら竜もまだあそこにいるでしょ?」

 

 メアは首を傾げながら遠くの竜に向かって指をさす。


 混乱しているライラの頭にシンの声が届く。


 『我輩のサービスで時を少し戻したのね。我輩は時を支配する竜なのね。凄いでしょ?』


 シンの言葉に納得し状況を理解した。つまりランスが声をかける前まで時間が遡った状態でライラはここにいるのだ。


 『後ね、あの程度の竜なら今の君の力なら威嚇だけで十分なのね。我輩は竜の肉が食べたいので全部狩って欲しいのね』


 『いきなり無茶振りですね。僕死んだりしない?』


 『はっはっは、面白い冗談言うのね。大丈夫、絶対死なないと言うか攻撃当たらないのね』


ーーだって君は神の加護にあるんだから


 シンの心の声までは届かなかったがライラはそんなにもレベルが違うんだなと納得し身構えた。


 竜の群れはすぐ側まで接近してきていたが一匹とて群れを乱して攻撃してこようとはせずある一人を明らかに狙っているように空中を浮遊する。


 「皆は村に戻って!狙いは僕だ!」


 ライラは大声で叫び村人を避難させたが四人だけその場に残った。


 「ライラが残るのに父さんが逃げるわけには行かないだろう?」


 「師匠として剣術の実践を見せるいい機会なのでな」


 ライガとランスは何の躊躇もなくこの場に留まる。


 「父さん、師匠」


 「俺もやるぜ!相手にとって不足なし!」


 「私だって魔法ぶちかましてやるんだから!」


 トールとメアも子供とは思えないやる気を見せる。


 二人の事は心配だったがそれ以上に二人の優しさがライラにはとても嬉しかった。


 「ありがとう、二人とも。でも大丈夫?」


 「大丈夫だ、既にビビって漏らした後だ。ガハハ、でも安心しろ。出るものでたらスッキリしたぜ」


 「きちゃないわね、今度から漏れそうな時はパンツ履かないでおきなさいよ」


 「……メアちゃん、それはそれで問題あるよ」


 この場にいる全員が高らかと笑った。

 

 竜の群れはライラ達を完全に包囲する形で上空を飛んでいた。それを見て五人はそれぞれ身構えた。


 「どれライラ少し父さんの勇姿を見ておけ」


 「私も行こう、かつて私達はコンビだったのだ。少し私達のコンビネーションを見せてやるとするか」


 「おう!」


 ライガは剣を腰に差し居合の構えを取る。ランスは向かってきた竜へと飛び移り魔法を使う。


 「サウザンドナイフ!」


 ランスの繰り出した魔法は豪雨のように翼に突き刺さりやがて竜の翼は機能を失い落下する。


 「ライガ、後は頼む」


 ランスはそう言い残し、次の竜へと飛び移りまたもやサウザンドナイフを放つ。


 ライガは落下する竜を確認すると目を瞑り腰に差した剣を力強く握った。


 「一閃!」


 ライガの一振りで竜の頭と胴体は音を立てることなくスパッと分かれた。そして次々と落ちてくる竜を同じようにスパスパと首をはねていった。


 「おじさん達やるねぇ、俺らも行こうぜメア」


 「ええ、ライラは私達の勇姿も見てて。強くなったから」


 ライラの方へ二人は向くとトールはガッツポーズを取り、メアはダブルピースをした。


 「うん、無理はしないでね」


 「「分かってる」」


 メアは数歩、歩き魔法の演唱を始めた。

 集結する魔力に気付いた竜の群れは狙いをメアへと変え飛んで来る。


 狙いを済ましていたかのように右拳を振りかぶっていたトールはメアの前へと立つと振りかぶっていた右拳を勢いよく地面をえぐりながら竜の群れに向かってアッパーをかました。


 「土竜竜噛(モグラリュウカミ)!」


 えぐられた土砂は凄まじいスピードで竜へと当たる。無数の痛みに竜の群れは痛みにより鳴き声をあげている。その間にメアは演唱が完了し目に見える程の魔力を手に持っていた。


 「行くわよ!鳴竜オメガ!」


 メアの手に集約されていた魔力は狭い檻から抜け出すように一匹の竜の形状をした雷が天を目指して昇っていく。竜の群れの中へと突っ込む寸前で鳴竜は凄まじい音を立て数十の竜へと姿を変えた。

 雷は姿を変えるも天に昇る勢いは止まることなく無数の槍が貫くように竜の群れを貫き天を突き抜けていった。それに接触した竜は黒焦げになり地面へと次々と落下していく。


 「トール君もメアちゃんも凄いや」


 四人でおよそ二十匹は撃退したであろうが残る竜の数は八十を上回る程度であった。喜ぶライラとは引き換え四人はバツの悪そうな顔をしていた。


 「ごめん、ライ君。魔力が切れちゃった。今私達がやれる限界はここまで見たい」


 「ライラ、不甲斐ない師匠ですまない。我らではこれが限界のようだ。残りまだ半分以上残っているがやれるか?」


 ライラはこれまでとは格段に違う自分に根拠のない自信が芽生えていた上にシンの大丈夫という言葉が後押しした。そして四人に微笑むと背を向け上空を見あげた。


 「じゃあ、行ってくる」


 『肉を1匹も逃すなぁ、行くのね』


 ライラは翼を擬態化させ上空へと飛んだ。そして竜の群れの真ん中で停止すると目の前にいる竜の群れに睨みをきかせる。


 ライラと面と向かった竜は体を硬直させ飛んでいるのがやっとの状態であった。それを見逃すはずもなくライラは腰の木刀を手に取り竜の頭に叩き入れる。


 竜は頭蓋骨を粉砕されるとけたたましい鳴き声を出しながら息絶え地上へと落下する。同類の様を見た竜の群れは一斉にライラへと向かっていった。


 しかし竜がライラを攻撃しようとも空振りするばかりで当たらない。と言うよりも本能が攻撃してはいけないと脳が指令を出す。

 自分には攻撃が当たらないという確信を持ったライラは父ライガと同じ居合の構えをとった。


 「終わりにしよう、一閃散乱!」


 ライラは円を描くように一閃を放つ。放たれた斬撃は竜に当たると斬撃が飛び散り拡散される。そしてまた別の斬撃や竜に当たるとまた拡散していく。


 無数の斬撃に切り刻まれた竜の群れは一匹も残すことなく全て切り落とした。上空にはライラだけが残ると村と足下の地上から歓喜の声が上がった。ライラは地上へと舞い降りると力を使い果たし死んだかのようにその場に倒れ込んだ。慌てて四人はライラの元へと駆けつけた。


 『しまった、力を使うと三日三晩、意識が戻らなくなる事、伝え忘れてたのね』



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