第5話 迫り来る危機
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ライラが教育係を申し出て三年がそろそろ経とうとしていた。トール、メアは自分の特技を最大限に活かすよう武術、魔法に特化して取り組んだ。最初は全力で力を出し切ってしまう二人には主に力をキープする方法や瞬間的に力を引き上げる方法を教えた。
一方でライラについては二年間は基礎を教え最後の一年間は自然と一体化し声を聞きなさいと教えられ平原の真ん中で今日も風に吹かれて草木が揺れる音に耳音を立てていた。
『はぁ……風が気持ちいい。トール君もメアちゃんも凄いなぁ。それに引き換え僕はこんな所でゴロゴロしてていいんだろうか。……っていかんいかん、師匠が言うのだから何かあるんだろうきっと』
ーーあれっ何だろう。カラスの大群かな?
ライラは山を越えた空に何百という数の何かがこちらに向かって飛んできている姿を捉えた。段々と近付くに連れ分からなかった何者かが明確になるとライラは直ぐさま起き上がりスターテヘ全力で走った。
「やばい!竜の大群だ!」
ライラがスターテに駆けつけた時には既に村全員が武器を手に取り迎撃態勢に入っていた。集まっている村人を掻き分けて長老がライラの元へと歩み寄った。
「ライラよ、よく聞くのじゃ。あの竜達は何者かに操られておる。そしてそれを解くには二つの方法しかないのじゃ」
「一つは術者が術の解除を行う事だよね。もう一つは?」
「もう一つは操られた者に恐怖心を与える事じゃ。そしてそれを行える者はライラしかおらんのじゃ」
ライラは自分は村の中でも非力な方だと自覚していた。自分より強い者がこれ程いてなぜ自分にしか出来ないのか理解ができなかった。
「本当は十二歳になったら話そうと思ってたんじゃが君の中には竜の力が封印されておる。それを抑えるために普段から魔力を消費しておったのじゃ。ランスに魔法の使用は禁止されておった理由はそのせいじゃ。そして今日否が応でも竜の力を引き出してもらわねばならなくなった。すまないとは思っているがあの大群にこの少数では流石に勝ち目はない。君が成功するまで何とか耐えて見せるから頼んだよ」
長老は優しく微笑みライラの肩に優しく手をかけると村の者を率いてスターテを出て行った。
「力を引き出すったってどうやって?」
ライラは力なく呟いた。落胆しているライラの背中からよく知る人物の声が聞こえた。
「その方法は一年間やらせてるはずだよ」
「師匠、だけど僕はよく分からなかったんだ」
「きっと向こうからは声をかけてきてるはずだよ。ライラは声を聞き取って声の主に会いに行くんだ。いいね?私も参戦するから先に行って待ってる。必ず来るんだよ」
ライラはランスの姿が小さくなるまで見つめていた。そしてライラはその場へ座り込み目を閉じた。
『…………よ。』
『微かに聞こえた。どこから語りかけてくるんだ?』
一方、竜の討伐に向かった村人達は死人は未だ出ていないものの数を一匹を減らす事もできず防戦一方でその場を耐えていた。
「長老、数が多すぎます!」
「何とか守りきるのじゃ。傷を受けたものは速やかに下がり治療を受けよ。前へ出れるものは戦って進行を止めるのじゃ」
「「おーー!!」」
村人は連携プレーで竜の翼を付き空中でバランスを失った所に槍で竜の喉元を確実に付く。
しかし、竜の鱗は硬く衝撃を与えているに過ぎず内側までは届かない。
拉致のあかない戦闘に痺れを切らしたメアが前線へと立ち杖先を竜の方へ向けた。
「私がまとめて相手になってやるわよ」