第15話 走れメッツ(メアとルッツ)
ターバン男は拍子抜けした顔で首を左右に振りコキコキと鳴らした。
「さぁいくぜぇ!一分位は耐えてくれよな!」
ターバン男はそう言うとまず一瞬の間にトールの前へと姿を現し、蹴りをトールの腹へと入れた。
トールはガードする事は出来ないと瞬時に判断し身体に力を入れたが蹴りが異様に重く背後の壁まで吹っ飛ばされた。
「ウグッ!重てぇ……。ライラ気を付けろ!」
すぐに向きを変えライラの方へと瞬時にターバン男は駆け寄ると今度は胸ぐらを掴むと逆の手で殴りにかかる。ライラは服を掴んでいる手を両手で掴むとターバン男の殴りかかる手を額で受け止めたが余りにも重い拳にそのまま押し切られライラも壁へと吹っ飛ばされた。
「おーいぃ。まだ十秒も経ってないぜ?ちょっとは抵抗しないと死んじゃうぜ?」
ライラとトールは一瞬目が合うと互いに頷き反撃の構えを取った。まだやれると言う意思表示にターバン男はニヤリと笑った。
「いいねぇ。悪くないよ君達」
二人はジリジリと左右にわかれターバン男を挟んだ。お互い合図も無しに阿吽の呼吸で同時に飛びかかった。スピードの速いライラの方が連撃を繰り出し一撃が重いトールが避けた所に拳を振るがしかし相手のスピードはそれを上回っており一向に当たらない。
二人の攻撃は全く当たらずそれどころか腕を掴まれて身動きが取れなくなった。
「ざんねーん、掴まれちゃったねぇ。残念賞にこれを二人にはプレゼント」
ターバン男は不吉な笑みを浮かべると二人の腕をそれぞれ片方へし折った。二人の痛みに耐えかねる声が地下中に響いた。
「うーん、いいねぇ。その響き、だけどほら立ちなよ。まだ楽しませてくれよぉ」
二人はもがき苦しんだがライラは必死にシンとコンタクトを取る。
『シン、これじゃ二分もたないよ!何か手はないの?』
『うーん、ライラの身体能力は上がってるのに手も足も出ないとはね。……分かった。君に我輩の全ての力を与えよう。だけどね、君の命と引き換えだよ?』
ライラは一瞬躊躇したがこのままでは二人とも死んでしまうと判断しライラは答えた。
『分かったよ。シンの力、僕にくれ!』
ーーその頃メアとルッツはフォレスト城へと辿り着き無事ランスと合流する事が出来、早速事情を説明していた。
「….というわけなの。お願い一緒に来て!」
「俺からもお願いだ。ライラの旦那がいなくなったら……」
「話は分かったよ。しかし私らの目を盗んでそんな大規模な人身売買をやっているとなるとかなりのやり手がいる可能性が高い。念の為、私の部下を二名連れてくるから少し待ってておくれ」
ランスはそう言うと一度城の中へ入ると再び二人を引き連れて戻ってきた。顔は二人ともローブに隠れて見えない為、男女かどうか分からなかった。
「紹介は移動しながらでいいだろう?まずはギルドヘ向かおう」
その場にいる全員が頷くとギルドを目指した。走りながらも会話は進む。
「俺はジーク。城の中では腕の立つ槍使いさ」
「私はシャルル。私は城の中では一、二を争う魔法使いよ」
「そうですか、私はメアでこっちがルッツ。これが終わったら是非お手合わせ願いたいわ」
「構わないけどそれよりごめんね。こう言う裏仕事の場合は顔を伏せておかないと行けないのよ」
メアは首を横に振った。国にも事情があるのだろうしそれよりも今は一刻も早くライラ達と合流したかったのだ。
「あの二人に限ってとは思うんだけど何だか胸騒ぎがするのよね」