第10話 盗賊団の巣
三人は村を出てようやく山を一つ越えようとしている所に差し掛かっていた。メアが先頭を歩きそれに続きトールをおぶって歩くライラ。気持ちよさそうに寝ているトール実にシュールな光景である。日も暮れ始めライラはメアを呼び止めた。
「メアちゃん、ちょっと待って」
「どうしたの?」
「日も暮れ始めてる。次の山を登るのは明日にして今日はこの辺で野宿をしよう」
「そうね、明日はトールも動けるでしょうから今日は体力温存も兼ねてこの辺で休みましょう」
二人は意見が一致するとトールを岩によりかかるように座らせ必要なものを集めに行く事にした。、
「トール君、ここで待ってて。僕達、木や食料とってくるよ」
「……すまない」
ライラはそう言い残しメアと山の中に入っていった。しばらく山の中を探索していると苔に覆われているが入り口が十メートル以上もある大きな洞窟を発見した。そこを今日の寝床にしようと二人は中を確認するために入っていった。
二人は小手に微弱な魔力を流し灯りを代用した。しばらく進んだが一向に奥にたどり着く様子がなく曲がりくねった洞窟を彷徨う。
「こんな大きな洞窟があるなんて驚いたね」
「……何か不自然ね」
「そう言われてみれば。動物もモンスターもいない場合って……」
ライラがその先を言おうとした瞬間、背後から気配を感じメアを抱えて前方へと思いっきり飛んだ。
振り向くと二十人近くの盗賊が入り口を塞ぎ、奥からも気配に気付いた盗賊達が現れ二人を囲んだ。
その中のお頭らしき人物がライラ達に話しかけた。
「おい、ここへ何しにきた?ってそんなのどうでもいいか。身包みおいてけや」
「断ったら?」
「はい、アウトー。お前らやっちまえ。こいつら骨も残さねえ」
ーー戦闘開始から五分後
「「どうもずびばぜんでじだぁ」」
「ったく何なのよ。いい歳したおっさんが鼻水垂らしてきちゃないわね。ライ君どうするこの人達?」
「うーん、この人達には殺意向けられてたしなぁ。掃除しとく?」
「そうね、この人達ほっといたら他の犠牲者出そうだし」
そう言うとメアは魔力を手に集め始めた。
「「ヒィーー!!」」
「最後に聞くけど何でこんな事してたの?」
盗賊団の頭であろう人が諦めた表情で俺が話をしようと言い前に出た。
「俺達は奴隷だ。だから職にもつけねぇ。やれる事は人から物を盗むこと位だ。いけないって事は分かってる。だけど生きる方法がそれしかなかったんだよ」
「うっ……メアちゃんいきなりヘビーな話になっちゃったね」
「もぅ、さっさとやっちゃえばこんな話にならなかったのに」
メアはゴミ虫を見るかのような眼差しで手に魔力は溜め込んだまま見下ろしている。
「「ひぃいぃぃ」」
盗賊団は絶えずメアに怯えていたのでライラは一旦落ち着くようメアにお願いし盗賊団と話を続けた。
「皆奴隷なんでしょ?誰かの持ち物なんじゃ?」
「ああ、そうだが基本的には逃げた奴隷は権利破棄してるだろうな。所有物が犯罪を起こせば罪に問われるのは所有者だからな」
ライラは良いこと思いついたといってメアに耳打ちした。
「……ライ君、本気で言ってるの?」
「うん、この人達がいいと言ってくれればだけど」
「でもなぁ。……いいわ、私が聞くわ。あんた達どれ位の犯罪をこれまで重ねてきたの?」
盗賊団は顔を見合わし個々が喋る。
野菜を盗んだ、金品を盗んだ、嗜好品を盗んだ
およそ三年ほどはこの生活をしていたと言う。
「ライ君、奴隷にするの止めようよ。罪が重すぎるよ」
「メアちゃん大丈夫だよ。安心して何とかなるよ」
ライラに肩を優しく掴まれ詰め寄られたメアは力を落としこれ以上何も言えなかった。ライラは盗賊団の方へ向き直った。
「じゃあ君達の奴隷の権利を貰います。ゆくゆくは商売をしてもらうのでその時にはここにいる皆奴隷と言う身分から解放するよ」
絶望の目をしていた盗賊団達の目はかすかな希望が宿る目へと変わった。
「本当にそんな事が出来るのか?」
「多分ね、やれるかどうかは君達次第さ」