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第3話◆大好き寅様!後編◆

「私は京大生リンチ事件の犯人を知っている!」


一瞬にして教室内は静まり返る…この新渡戸寅ノ助と言う男何を言い出すのか?今まで講義以外の話を聞いたことはない。それが突然…

あまりのことに生徒達は口をあんぐり開け身を固まらせる…さらに新渡戸は話を続ける。


「君たちは犯人が誰だと思うかね?」


「………」


誰も口を開ける者はいない。新渡戸は一度ぐるっと周りを見渡した。何をあろう一番驚いたのは岩井ゆきと馬鹿田阿呆助である。そして新渡戸の目はある生徒に向けられる…

「君はどう思うかね…馬鹿田阿呆助君?」


『!』


馬鹿田の顔が見る見る青冷めていく。バレるわけなどない…そう思っていた。自分は事件の現場にはいなかった…だが新渡戸の顔をみると全てがお見通しのように見えた…馬鹿田は動揺を隠せないでいた。


「あ、あう!ぼ…僕は!ち、ちがう違う!う…あううううんこ!」


「ふっ…何を慌てているのかね?何も私は君が犯人だとは言ってはいないのだよ?」


「う…う!うんこ!」


馬鹿田の顔は更に青冷めていく。ゆきは舌打ちをした。周りの生徒等もざわつき始めている。この時ゆきは確信していた新渡戸は事件の全てを知っている、全てはお見通しだと…だがそんな新渡戸も好きだった。京大生にも警察にも犯人像がつかめてはいない…やはり天才は違う…ゆきは新渡戸の話を聞き漏らさないよう必死だ。


「諸君!京大生リンチ事件の犯人はこの中にいる!!!」


新渡戸の罵声が教室内に木霊する…そして新渡戸は我が子に言い聞かせるようにゆっくりと語りだした。


「まず被害者の共通点が無いように言われているがひとつだけある………それは文学部出身と言うことだ…さらに心理学を選択している。普通に考えただの偶然とは思えない」


「………」


「次に犯人像だが………恐らくは共犯者がいるだろう…君たちが犯人だと仮説するなら君たちは勉強だけが取り柄の下等生物だ…リンチなど行う度胸もない…実行犯は第三者…君たちとは面識のないね…」


「………」


「犯人は恐らくは女だ…そして恐らくは私、新渡戸寅ノ助に何らかの憎悪…嫉妬を抱いているだろう…君たちは小、中、高全て学力はトップだった…自己顕示欲が人一倍強い…だが新渡戸寅ノ助に会ってしまった。この天才に比べれば君達は馬鹿だ!」


「………」


「諸君!私の言いたいことが分かるかね?犯人は私に嫉妬しているのだよ!頭ではかなわないから私を困らせようとする!そしてこんなくだらない事をするのは下等な女と言う生き物しかいないのだ!犯人は私の事が憎いのか!それとも…」


「………」


「私に好意を寄せているのかこのどっちかだ!!こんなくだらない事はやめたまえよ!こんな事をしても私は君の事を好きにはならない!」


静まり返る教室内。新渡戸の吐息だけが気持ち悪くハァハァと響く…

今まで新渡戸の講義等誰も聞いてはいなかった。生徒は寝たり、他事をしていた…だが今は違う…初めて生徒と新渡戸がひとつになった。理由はどうあれ新渡戸に皆聞き入っていた。

そしてこの日以降、京大生リンチ事件は起こらなくなった。事件は犯人が捕まらないまま迷宮入りしたのだった…




今日も岩井ゆきは新渡戸の写真を見て目を覚める。新渡戸の意味の分からない講義に聞き入る。そして新渡戸の写真にキスをして眠りにつく…これからもずっとそうだろう叶わぬ恋心を抱きながら…


今日も馬鹿田阿呆助は岩井ゆきにストーカーをしている…叶わぬ恋だと知りつつ諦めない。まだゆきのウンコは食べさせてくれないようだ…


今日も京大生は笑いながら通学する。もうリンチ事件は起きないだろう。だが忘れないでほしい。結果として事件を解決に導いたのは新渡戸寅ノ助だと言うことを…


これは余談だが岩井ゆきは新渡戸の将来妻となる人だ…だがそれは別のお話……である。

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