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第3話◆大好き寅様!中編◆

「え〜!今度は文学部の小倉君がやられたって〜え〜!」


「そうなのよゆきちゃん…これで8件めよ…やっぱり京大に恨みがある人の犯行かなぁ…例えば京大を受けたけど落ちて京大生に逆恨みとか…」


「きゃ〜怖い怖い!」


岩井ゆきは学校の昼休憩、友人等と談笑している。やはり会話の中心は京大生リンチ事件である。もう学校中この話題で持ちきりである。

学生等は夢にも思わないだろう、この京大生リンチ事件の黒幕は岩井ゆきだと言うことを…そしてこの事件は1人の京大生岩井ゆきの歪んだ欲望だけで成り立っていると言うことを…


どうでも良いことだが男性の視線が気になる。皆ゆきを見ているのだ。ゆきは元々小柄でいつもお嬢様チックな服装をしているとても可愛らしい女性だ。学校では恥ずかしがり屋のお嬢様で通っている。京大のアイドル的存在なのだ…


「ん?」


1人の友人が気ずく


「ゆきちゃん携帯ブルッてるよ」


「え?あっ本当だ…」


ゆきは携帯をちらりと見た。ある人からの電話である。一瞬険しい表情になるがすぐに笑顔に戻る


「ごめんね、電話だ…ちょっと待っててね」


「ヒューヒュー男かな男かな〜?」


友人は悪戯をするようにゆきをおちょくる。ゆきは照れながら違うよ〜と言っている…非常に微笑ましい光景である。どこにでもある友人との会話だ…だが食堂を出た時のゆきの表情は違っていた。人前で見せる明るいお嬢様ではない、冷徹な悪魔のような表情をしている。

ゆきは人目を気にし非常階段までやって来る…辺りを見渡す、誰もいる気配はないようだ。そっと携帯電話を耳に当てる。


「何?奴隷1号…学校内では連絡してこないでちょうだい!」


「あっ…いや…その…」


奴隷1号とは京大いちのブ男として知られる馬鹿田阿呆助ばかたあほすけである。

馬鹿田は岩井ゆきが好きなのだ。まるで月とすっぽんである。ゆきにとっては馬鹿田と知り合いだと断じて知られたくはなかった…

そして馬鹿田だけがゆきが新渡戸寅ノ助に好意を寄せていると知っている…

なぜかって?それは馬鹿田のストーカー行為の果てに知り得た情報だからだ。馬鹿田はゆきの望むことなら何でもする。奴隷と言われてもかまわない。大好きなゆきがアイツをボコれ!…っと言われれば喜んでボコる…好きな人の望むとおりにしてあげたい。馬鹿田はそう思っていた。どんなに嫌われても構わなかった…

しかしゆきは携帯を片手に明らかに不機嫌そうな態度をとっているのだった。


「で?用があるのか無いのかハッキリして!切るよ!」


「待って!…え〜と…僕は…あう…」


「言いたいことあるなら早く言って!」


「あうう…僕は…嬢王様の…う」


「で?」















「ウンコが食べたい!」






ツーツー…


電話は切れた。

当然である。

女の子に向かってウンコが食べたい?…嫌われて当然のセリフである。

だが馬鹿田は何故電話を切られたのか理解できない。

好きな人のウンコが食べたい…当然だろ?これは余談だがカリバリズムと食便の持つ意味合いは似ているらしい。人食はその人を食べることによって身も心もひとつになる…といった意味を持つ。食便もその人の汚物を食す事によって身も心もひとつになる…まぁ馬鹿田がここまで考えているかは疑問ではあるが…


この京大生リンチ事件の真相はゆきがターゲットを馬鹿田に伝え馬鹿田が大金を払ってヤンキーに依頼する。そしてヤンキーがリンチを実行する。真相はこんな所だ。

岩井ゆきも馬鹿田阿呆助も実際のリンチには何ら関わっていない。馬鹿田とヤンキーの繋がりも実際にはない。馬鹿田は面識の無いその辺のヤンキーを捕まえて金を払っているだけだった。

犯人は捕まらない。警察も全く繋がりを見いだせないでいた。京大生は恐怖に震えていた。誰一人犯人が分からないでいた…たった1人を除いて…天才、新渡戸寅ノ助を除いては…


そして京大生等は新渡戸寅ノ助の頭の良さを再確認するのである…

新渡戸寅ノ助講師、心理学講義の事である…


「え〜…カリバリズムを行う意味…であるからして…」


学生等は新渡戸の講義など全く聞いてはいない…ま〜いつものことである


「食人とは…ひぐらしという小説で〜…」


ひそひそ話が聞こえる。京大生リンチ事件である。学生等は講義よりこちらに興味があるようだ。


「かのエドゲイン、アルバードフィシュの違いは…」


元々、新渡戸自身も講義等やる気はない、ただ仕事だからやっているだけだ。携帯を触る学生、談笑する学生、音楽を聞く学生…講師、学生共にやる気はない。


「心理の世界で…」


新渡戸の講義はいつもこんな感だった。


「………」


「………」


「………」


「………」


「…













新渡戸が急に黙りこんだ。体が凍りついたように動かない。訳がわからない…今までの講義でこんな事は一度もない。学生等は何が起きたか分からず恐怖にも似た感情を抱く…


『寅様?』


ゆきも心配そうに新渡戸を見守っている。時間にして30分程だろう…

そしてこの沈黙の時間を打ち消すかのごとく新渡戸は叫びだした。









「私は京大生リンチ事件の犯人を知っているぅぅぅぅーーーー!!!!」


さっきまでのざわつきが嘘のように教室はしずみかえったのだった…

さっきまでのざわつきが嘘のように教室はしずみかえったのだった…

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