第10話◆梅さんの裏切り…第1章◆
物語にでてくる梅田洋平と言う人物は架空の人物です。
それは一通のメールから始まった…
「ば…馬鹿な…」
新渡戸寅ノ助にとっては受け入れがたい現実…
「………」
この日もいつものように京大で講義をし帰宅をした。そしていつものようにパソコンを開く…目的はただ一つ、『小説家になろう』で小説執筆するためだった。
ところが…
……
投稿できないのだ。下等生物が書いた小説は見ることが出来ても小説投稿が出来ない。いまだかつてこんな事はなかった。新渡戸はパソコンの電源、ケーブルを何度も確認したが異常らしき物は見つからない。そしてふとパソコンを見ると一通のメールが届いていることに気ずく。
このメールこそが新渡戸の精神を粉々に打ち砕くものである。ここにそのメールを記する。
ーーーーーーーーーーー5/1.9:30
件:『小説家になろう』運営ウメ研究所
私はウメ研究所代表、梅田洋平ともおします。誠に残念なのですがあなたの小説は多数の読者から批判があり勝手ながらサイトから退却させていただきました。
私も小説を拝見させていただいたのですが…まぁお下品なことくだらないこと!特に春の競作祭の作品は酷く溜め息がでるかぎりでありました。私、以下他の利用者様は真面目に執筆している方が多数でありまして健全なサイト運営をするためには退却はやむおえない…と言うのが結論です。なお他の利用者様の小説を見ることは出来るので他の利用者様の小説をお楽しみください。梅田洋平。
ーーーーーーーーーーー
「………」
「……う」
「うわぁぁぁぁー!」
新渡戸は涙を流し。何度もパソコンを強打した。まるで理性の働かない子供のように地を這いつくばり全身をかきむしった…
何がショックか…それは小説投稿できないのも一つだが。一番は梅田洋平に自分の小説を否定されたことである。
新渡戸が人生で認めた人間は二人。ひとりは故、尼崎杏奈…そしてもおひとりは梅田洋平なのだ…
「う、う、梅さんがぁー梅さんがぁー!」
「ヒギャアアアアア!」
ウメウメ日記を誰よりも楽しみにしていた新渡戸…そうこれを読んでる君よりもだ!春の競作祭に投稿したのも梅さんが読んでくれるものだと思ったからだ。梅さんなら自分の小説が分かってくれる…そう思っていた。
だが現実は違う。梅さんは自分の小説を『お下品!くだらない!』と言った…
あの最高傑作…『精子にマヨネーズをかけて食べてみた』までもくだらないと。
何時間も泣いた。そしていつしか涙は枯れはて新渡戸寅ノ助に残ったものそれは…
『絶望』
そう『絶望』だけである『小説家になろう』がゆういつ自分をさらけ出せる場所だった。こんな素晴らしいサイトを提供してくれる梅さんに恋心さえい抱いていた…
だがもうこのサイトで小説投稿する事は出来ない…新渡戸は主食ポコチンになることで自我を保っていた…もう主食ポコチンとして小説投稿は出来ない…
生きる糧を失ってしまった…
「死のう…」
『死』…究極の選択。これからどれだけ楽しいことがあろうが全てが無になる『死』
分かってくれとは言わない…たかがサイトが使えないだけで自殺なんて…でも新渡戸にとっては『小説家になろう』がそれ程までに重要な意味を持っていたのだった…
新渡戸は愛車のキーを回す。
ブッオン!
耳をつんざく重低音。R34…180sxから乗り換えたときこの車の凄さを嫌と言うほど実感した…これもいい思い出。
「さよならGTR…」
バケットから伝わる振動は新渡戸にとっては子守歌。この車を愛していた…今までありがとう。
京都大学…新渡戸の職場…車内から眺める京都大学は暗くどこか寂しげのようにも見えた。
「さよなら京都大学…」
ここでは色々な事があった…尼崎杏奈との出会いもここだ。京都大学が無ければ尼崎杏奈とも出会わなかった…京都大学…今までありがとう。
新渡戸は京都の街を疾走する。暴走と読んでもいいかもしれない。R34で思い出の地を疾走する。金閣寺、清水寺、お茶屋…全てが思い出だ。そしてもう見ることもない…京都の夜景はとても美しく心を浄化させる…
「さよなら京都…そして今までありがとう」
新渡戸は涙を流しながら京都の街を後にしたのだった。