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第8話◆新渡戸の過去…2章◆

「先生お帰りなさい」


新渡戸の前に立つ女性…髪を束ね、花柄のエプロン姿を見せる。なれない料理のせいだろうか、指には絆創膏が張られている…

この女性…新渡戸が十年前に一緒に住んでいた女性だった…

名前は尼崎杏奈という。


新渡戸は自分の目の前に映る光景が信じられなかった。何故なら尼崎杏奈はもうこの世にはいないはずだからだ。死んだはずの尼崎杏奈が自分の目の前にいる…もしや死んでいなかったのか?いやいや間違いなく彼女は死んだはずだ…

そう死んだはずなのだ…だが現実に尼崎杏奈が目の前にいる


「………」


「………」


「………」


新渡戸は我が持つ天才的頭脳をフル回転させる…今この有り得ない現状を理解しよいと必死だ。京大教授、美術、音楽に天才的才能がある。さらに芥川賞受賞作家ときた新渡戸である。自分なら理解できるはず…と思っている。


「………」


「………」


「……先生?どした?」


杏奈が怪訝そうな顔で新渡戸を見る。新渡戸は何も答えず眉間にシワを寄せる。



「先生、何かあった?」


「………」






昔、バック・トゥ−・ザ・フゥーチャーと言う映画があった。少年達が車に乗り込みタイムスリップすると言う内容だった…自分にも同じ事が起こったのか?180SXに乗り時空を乗り越えた。


「………」


「………」




あり得ることかも知れない…条件を満たせばタイムスリップも考えられる…

まずタイムスリップの条件てして光速度を超えることだ。光速度は約30万km/S…

一般的に一秒間に地球7周半…これを180SXが超えることが絶対条件である。

180SXとはスポーツカーである。チューニングによって馬力も上がる。タービンから何から何までレース使用に変えれば光の速さを超えることも可能か?


「………」


「………」

「…あの…先生話聞いてる?ピラフ作ったんだけど…」


でも仮に光速度を超えたとしてだ。人はGに耐えうることが出来るのか?戦闘機でさえかなりのGがかかる…光速度など戦闘機の比ではない…通常なら内蔵が潰れ原型を留めないのではないか?


「………」


「………」


「…先生!人の話き・い・て・る!」


いや…まてよ…そもそも光速度の元になった『相対性理論』が間違ってると仮説したら…

そもそも光速度とは1873年マイケルソンによって導き出された数値がもっとも適するて言われている。マイケルソンも相対性理論を元に考えている…相対性理論が間違いだとしたら?光速度が実際は100km/sだとしたら?


「………」


「………」


「先生!ピラフ冷めちゃうよ〜」


もしも光速度が100km/s…考えられる。私の180SXなら100km/sを超える事も可能だ。

これで第一の条件、相対性理論の間違いによって光速度を超えることは出来た。だがタイムスリップにはもう一つの条件が必要になる…宇宙で行うことと言うのが条件だ。宇宙空間で光速度を超えることによって光が屈折し時空との歪みが生じる…


「………」


「………」


「先生…あの…ピラフ」


180SXで宇宙に行く事は可能か?


「………」


「………」


「先生…無視しないで」


180SXの馬力がおおよそ195馬力…

1馬力とは1秒間に75kgのものを1m動かす力を言う。195馬力つまり…

1秒間に14625kgのものを1m動かすことが出来る。一般的に宇宙に行くスペースシャトルの重量が20トン…単純にスペースシャトルを1m動かす馬力は1500000馬力…180SXでこの馬力を現実のものに出来るのか?更にこれは重力を考えていない場合である…重力を計算に入れると…


「………」


「………」


「先生…私気に障ること言ったなら謝るから…」


無理だ!どう考えても180SXで宇宙に行くことなど…だが現実に死んだはずの尼崎杏奈がいる…タイムスリップする第三の条件があるのか?


「………」


「………」


「先生…」


いや待てよ…180SXには第二のエンジン…原子力エンジンがあるとしたら…

当時の日産社長が来たる核戦争に備えてある180SXに極秘に第二エンジンを搭載していた…この事は公に発表する事はなかった。そうその180SXこそが私の乗ってきた180SXだとしたら!


「………」


「………」


当時の社長は核戦争に陥ったら宇宙に避難しようと考えていた…180SXで!こう考えれば納得できる!180SXで宇宙に行く事も納得できるタイムスリップも納得できる!


「………」


「………」


新渡戸は科学的にタイムスリップを解明したことによって精神的に落ち着くことが出来た。そしておもむろに尼崎杏奈を見る…

泣いている…何故だか分からないが泣いている…新渡戸は困ったように話しかける。


「あ、尼崎君…なぜ泣いているのかね?」


「グスン…グスン」


「お、おい!どうした?何かあったかね?」


「だ…だって…ピラフ作ったのに…先生話聞いてくれない…」


「はぁ?ピラフ?」


新渡戸はテーブルに目をやると美味しそうなピラフがふたつ並んでいた。


「ピラフ作ったのかね?美味しそうである!」


「うん…作った」


「え〜と…一緒に食べたいとお思いか?」


「うん…思ってる」




新渡戸と尼崎杏奈は一緒にテーブルにつきピラフを食べる。外からのそよ風…テレビの音…心地いい…尼崎杏奈と一緒にいる時間は心地いい…ふたりの間には会話はないがそれも新鮮にさえ思えた…


この時間が永遠のものになればいい…そう思っていた…

新渡戸は新聞に目をやるそこには…


1998年12月12日と書いてある…




10年前…やはりあの頃にタイムスリップしたのだった…

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