表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/102

第一章  不良と正義4

 「サッカーやれば良いじゃん。俺と一緒にやろうぜ」

 口を挟む克己を、知美が一睨みする。

 「ほら」

 知美が、勝ち誇ったような笑みで、ペンと用紙を明日歩に突き出す。

 明日歩は渋々と受け取った紙に、陸上部と書き入れる。

 「陸上部?」

 克己と知美が、声を揃えて言う。

 「何で? サッカーにすれば良いじゃん」

 「剣道部じゃないの? 仮入部でも先輩に褒められていたじゃない?」

 困惑した顔をしながら、明日歩は不貞腐れた口調で、何でと言い返す。

 「あれは父さんが煩いから、顔を出しただけで、別にやりたかったわけじゃないし」

 「だって、だってさ。幼稚園の頃やっていたじゃない? ママが言ってたわよ。明日歩君は天才剣士だって」

 明日歩は顔を顰める。

 一回や二回、大会で勝ったくらいで、大人は大騒ぎしすぎなんだ。相手に打たれるのが怖いから、先にやっつけないと、自分の身が危険だから必死になっただけで、それがどうして、天才とか言われるのか意味が分からない。

 納得が出来ない知美は、なおも食い下がる。

 「あんたは弱っちぃんだから、剣道みたいなので鍛錬した方が良いって」

 「おめーは、ぐだぐだうるせんだよ。と、明日歩が申しております」

 明日歩は目をひん剥き、克己を見る。

 

 知美の表情がみるみる鬼と化し、腰に手を当て、何ですってと据わった声で言う。

 明日歩は、違うと手を胸の前で動かすが、面白がった克己はさらに続けた。

 「黙れこのブス。by明日歩」

 「言ってないってば」

 「ほれ、魔王に食べられてしまえ」

 克己が歩の背中を押す。

 まともに明日歩の体当たりを受け、知美がよろける。

 完璧に面白がっている克己を恨みつつ、明日歩は一目散に、昇降口目指す。

 靴をはき替えながら後ろを見る。

 知美は追っては来なかった。

 ホッとする明日歩だったが、油断は禁物である。

 昇降口を出た明日歩は、後ろを振り返ることもせずに全速力で校門を出て行く。

 そんな明日歩を、渡り廊下で知美は見ていた。

 「もしかしてお前、剣道部?」

 同じように隣で見ていた克己に言われ、知美はムッとなる。

 「悪い?」

 「ご愁傷様」

 「うるさい。、だから、克己は嫌いなんだ」

 行ってしまう知美に向かって、克己が悪たれを吐く。

 「ばーか。明日歩がお前なんか、相手にするかよ」

 「うるさい」

 言い返す知美の瞳は、薄っすらと濡れていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ