第四章 夏の微熱14
今年は哲平の発言で、おんぶ走りと最後の激走と、キャプテンは二回走ることになった。
「誰の主催だか分からない」
ぼやく久我山の首に哲平が腕を回す。
「人の恋路を邪魔をする者は報われないよ」
脅しを入れられやけくそに二つ返事をする久我山を見て、明日歩は最後まで傲慢だなと知美に話し掛ける。
「そうだね」
上の空の答えを返えさられ、えっと首を傾げる。
奈波の用意、ピーと言う間の抜けた笛の音を合図に、レースが始まった。
スタートから笑えた。
犬走りで走って行く森崎を、スキップで久我山が後追う。次は、二人三脚で走るのと後ろ向きに走って行く奴との対決だった。片足とびの奴がいると思えば、トレーに水を入れたコップを乗せて走る奴が追いかけて行く。
リレーの中盤、哲平に負ぶわれた奈波が100メートルを激走して行く。奈波が悲鳴を上げる。
「ちゃんとしがみついていろよ」
そう言いながら、明日歩は先に走る哲平を追いかける。
この順番も、哲平の差し金で決められていた。
「意外と重いな」
「失礼な」
怒りながら、知美の顔が緩む。
哲平チームにかなりのリードをとられて、バトンタッチをした明日歩が、そっと屈み知美を下す。
「大丈夫か?」
下された知美が、地面にへたり込む。
「もっと丁寧に扱いなさいよ」
「あ、ごめん」
知美は、プイと横を向いてしまう。
明日歩は、そんな知美を気にも留めずに、もうレースの応援を始めている。
知美は唇をかみしめ、地面を見つめていた。
リレーは、チキンレースになっていた。
抜きつ抜かれつの、いい勝負だ。
残すところキャプテン同士の200メートルだけになり、明日歩の目が真剣になる。
「明日歩、勝負だ」
そう言って、哲平が駆け出して行く。
「望むところだ」
明日歩が叫んだ。
遅れて、明日歩がバトンを受け取る。
哲平はトラックの半分まで行っていた。
明日歩がどんどん加速していく。集まっていた誰かが、早いと呟く。
ゴール直前、明日歩は哲平を交わし、チームに勝利を齎した。
知美の目から堪えられず涙があふれ出す。




