第二章 不滅のヒーロー4
初詣客でにぎわう神社。
家族揃って合格祈念を済まし、歩はトウモロコシをおいしそうに頬張る。渋々ついて来た明日歩は友達の姿を見つけ、行ってしまうのを見届けながら、奈緒が歩に話しかける。 「ねぇ歩、あの子に何を言ったの?」
あんなに話すのも嫌がっていた明日歩が、素直に今日も一緒にお参りに来るなんて、奈緒には考えられなかった。
「昔々の話をしただけだよ」
境内の脇、池に架かった橋を渡りながら、鯉を見つけた歩が、でかいなと言う。
「そう言えば歩の昔話って、私、聞いたことがなかったわね。私も聞きたいな」
「大した人生を送ってないから」
歩はトウモロコシを食べ終わり、ごみ箱ごみ箱と話しをはぐらかして、先を歩いて行ってしまう。
そんな歩を小走りで追いつく奈緒の手を握り、微笑む。
「今が幸せだから、良いだろ?」
「もう、ずるい」
奈緒が言うと、歩はケラケラ笑った。
友達と射的をしているのを見て、二人は微笑みあう。
「明日歩、あまり遅くならないでね」
「了解です」
答えたのは、克己だった。
ざわざわと賑やかさを増し、いつの間にか大勢で楽しみだすのを、歩は眩しそうに目を細める。
「後で、みんなを連れて行ってもいい?」
「おお連れて来い。美味いもん、用意して待っているから、早く帰ってこい」
「ヨッシャ。おばさん、オールしてもいいっすか」
胸の間でポーズをとって見せる克己の頭を、明日歩が叩く。
「調子こくな。俺たち、一応受験生なんだからな」
「分かってるって。だから一緒に勉強を」
「嫌だよ正月早々克己と受験勉強なんて」
「良いな。俺、数学で分からないとこあるんだけど、教えて欲しいな」
「ああそれだったら私も、理科、教えて欲しい」
「じゃあこれから中田の家でやらねぇ」
「おおそうしろ。何ならオレも勉強みてやろっか」
「結構です。おじ様とおば様は、ゆっくり正月をしていてください」
知美にぴしゃりと言われ、歩は吹き出す。
「奈緒、なんかこういうの良いね」
明日歩の接し方で悩んでいたことがまるで嘘のように、晴れ晴れとした気持ちで迎えられ、いい年を越せそうな気がする奈緒だった。
――そして春。
家からほど近い高校に進学を決めた明日歩を挟み、歩は一枚の記念写真を撮った。




