決意
もぅ、この景色も見ることはないんだろうなって思うと、世界は随分違って見えた。
何もかもが色鮮やかで、今まで気づかなかった魅力に今更気付く。
『あれ、この町は、こんなに綺麗なところだったっけ?』
弟の背中を目の前にしながら、一人思う。
『この背中も、こうやってふざけあうことも、もう無くなるのかなぁ』
そう思うと、つい泣きそうになるから、私は弟に怒った。
「ッバァカ!マコのバァカッ!」
「な!?いきなりなんだよ!」
「っべぇっつにぃ?何もなぁいよぉ〜〜だっ」
「あ、もうお前帰ったらお仕置きな?(ニヤリ」
「ふえ!?ごめんなさいっゆるしてっ、、、ぅわぁぁぁ!?」
本当はしちゃいけない二人乗り。
自転車は弟のリズムを刻んで体を伝わる。
目の前にある背中はいつの間にか大きくなってて、随分たくましくなっていた。
「あんたさぁ」
「ん?なに?」
「いいの?」
「何が?」
「私いなくなるけど、あんたあそこにいて、大丈夫なのかって聞いてるの」
「あー、まぁ大丈夫だよ。行く当てもないし、あっても残ると思うなぁ俺は」
「、、、そっか」
「うん」
「まぁっ、あんたがそう言うなら、別にいいけどさー」
弟の体を通り抜けた風が、私にも当たる。
二人のサイドには、二度と見ることがないかもしれない街の景色が流れる。
走馬灯のように、やけに早く、それを目視することもないまま流れ行く。
あぁ。まるで自分の現状みたいだなと、思った。
自分で、自分の意思でそうなると認識する前に、時間は、物事は進んでいく。
もう、戻れない。
私は、一人になる。
いつか望んでいた、これが未来。
そして、多くを望みすぎた、罰。
でも、完全に孤独に落ちるわけじゃない。
大切な人がいる。いてくれる。
それだけは忘れないようにしよう。
それはきっといつか、本当にどん底に落ちた時、私の支えになるはずだから。
流れていく風と、大好きな街の景色。
きっと戻れると信じて、前に進みたい。
支えてくれる人が確かにいること、支えていきたいと思う人が確かにいること。
それを胸に抱いて、いい加減前を向こう。
めそめそしたところで時間は現状はまってなんてくれない。
だから、私は
「ふんっ!いいもぉんだ!私は帰ってくる!必ず帰ってくる!こっそりだって、なんだって!何があったってここは私の町だもん!見てなさいよ!立派に仕事こなして、綺麗になって帰ってきてやるんだから!」
「お姉ちゃんはどうやっても綺麗にはなれないよー」
「うっさいわ!」
前を向け。過去を振り向くな。
今ある世界を愛そう。
この町を、今の自分を、そしてこれからの自分を。
見る間もなく流れていく景色をこの目でまたしっかり見るために。
心配してくれるみんなが、安心して笑ってくれるように!
「さぁ!やってやるさ!しぃさんは笑顔が一番だもんねっ!」
進め。
進め。
まだ先は長い。
必ず帰ってくるため、この背中を弟と呼ぶため。
今はただひたすら、
「進んでやるぅーーー!」
みんなありがとう。
心配かけてごめんね。
でももう平気。
生きていける。
前を向ける。
ありがと^ ^