1−3 気付く
………。
…意識が浮上する。
ゆっくりと身体を起こしてみて、自分が『自分の身体』に戻ったことに気がつく。
自分のそばには、くぅとりぃ。
ちぃちゃんは見当たらなかった。
『戻ったか。』
あの時に、自分を呼んだのと同じ声がする。
「…だぁれ?」
『目の前にいる。』
「…くぅ?りぃ?」
『おそらく、お前がくぅと呼んでる方だな。』
ということは、犬のほうである。
そしてそれから自分は、こんこんとお説教された。
それは今でも忘れない。
そのくらい、こんこんと。
『…まぁ、無事で良かった。が、今後こんなことがないように、今から話すことを忘れるなよ。』
くぅの話を要約すると、こんな感じだ。
いつも周りに見えている『誰か』…それは『霊』とよばれるもの。
そしてそれは、大概の人には見えないこと。
見える人も、確かにいる。感じ取れる人は、もっといる。
だが、自分はだいぶその力が強いこと。
その力は、『霊感』と呼ばれているものだということ。
それから…自分はまだ小さいため、状態が不安定であること。
守護霊と呼ばれるものもまだついていない。
『空っぽなのに、エネルギーだけは溢れている。』
状態で、身体を乗っ取ろうと思えば、乗っ取れてしまう。
それが今回起きたことなのだという。
ちぃちゃんは、『悪霊』だった。
身体を乗っ取り…何食わぬ顔顔して、人間界に紛れこもうとした。
それに薄々気がついていた二匹は、守護霊になるべく、とある場所まで出向いていたのだという。
そこがどこなのかは、結局最後まで教えてくれなかったが…。
とにもかくにも、ちぃちゃんはその隙を狙った。
しかし後一歩のところで、二匹に阻まれ、取り返し、今に至る…という。
「…じゃあ、ちぃちゃんは?」
小さな子なら、当たり前な質問。
『消えたよ。おそらく、存在そのものが。』
守護霊になるものにコテンパンにやられて、存在できる訳がない。
友達と思っていたちぃちゃんが、いなくなった事実に気がついた自分。
そして大泣きして、二匹を大いに困らせるのだが、それは、それ。
むしろ、そのおかげで自分は気がついたのだ。
何故に自分には、こうもたくさんの人が見えるのか。
夜、自分が寝ている時にのしかかっていた人が、何をしようとしていたのか。
手招きする人が、自分をどこに連れて行こうとしているのか。
それと同時に、怖くもなったのだろう。
その日以来、自分は寝る時、ぬいぐるみが手放せなくなる程度には。
そして、くぅとりぃは、自分の守護霊になった。
「守護霊ってなぁに?」
と尋ねた私に、りぃは。
『何かあった時に、零ちゃんを護るためにいるんだよ。』
という、不思議な答えを返してくれた。
今なら分かる。
あの二匹が、どれだけ自分を護っていてくれたか。
小さい時は勿論のこと、ある事件の時も。
『霊には怖いものもいる。でも、くぅやりぃみたいなのもいる。』
そう認識した自分は、少しずつ霊との距離をはかるようになっていく。




