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激震
うんうん頷きながら、菊野も楽しそうに彼らの相手をしている。あれ以来菊野が若菜の事を聞くことも無いが、両親が戻って来ると言うニュースは、自分が出て行く必要も無い事だった。少し須崎は、女将の気持ちが分かるような気がした。
「ああ・・そう言えば黒田社長体制になって、大幅な人事異動もあったわよね、㈱RECも。北海道営業所所長以下が、根室に日参して挨拶の名刺を置いて行くなんて、もう数年ぶりだわよね」
「ええ・・佐伯さんのお陰です。俺らも感謝しています」
今村、円西も上機嫌であった。
「ねえ?あの社長は関連子会社に移ったと言う話だけど、実際何か聞いてる?」
「え・・いや・・それは」
安藤がその話題には、拒否の姿勢。それはそうだろう・・会社の内部事情なんて女将には関係無い話だから。須崎もそれ以上言う気は無かった。ところが・・その女将の内面には、聞いておきたい、或いは確かめたい事があったようなのだが・・こう言う酒席で言う話でも無いので、それはすぐ話題が切り換わる。




