少女と鳩
甲斐の言い方はきついが、本当にそうだろう。営業マンである以上、取引先であるこの位の知識は、自分で持って無くてはならない。特に保守的傾向の強いこの営業スタイルでは、失礼があり、得意先を逃す事は、決定的なダメージを受けるからだ。少し助け船が出た。須崎の部下であり、年上だが進藤だ。
「副所長、二人でこっちのブースに来る前に、挨拶しましょう。挨拶が遅れた非礼を詫びる意味でも」
あれ・・助け船的な発言だが、誰も佐伯の所へ案内しようと言った者は居なかったからだが、そう言う事か・・須崎は納得した。要するに、この北海道営業所に居る限り、自分の事は最低限自分でせよと言う事らしい。
進藤と共に、新任の挨拶が遅れた事を詫び、佐伯に名刺を差し出すと、少女が少し驚いた顔をした。しかし、そう広い町で無い以上、どこかで顔を合わして不思議は無い。佐伯は、とても一筋縄ではいかぬ難しそうな人物であった。確かに進藤と挨拶を先にしておかねば、臍を曲げた事だろう。
「まてな挨拶恐れ入る・・まあ、後でそっちのブースに行くわ」
「はい!お願い致します」
須崎は、進藤にすぐ聞いた。