改革
「私は嫌・・行かない。知恵ちゃんだって一年生になったばかり。北海道転勤ってもうこちらには戻って来れないんでしょ?永住するって言うの?」
「いや・・前は、そう呼ばれていたよ、確かに。けど、今回の要望は、須崎の片腕としてしばらく協力してくれって意味だと思う」
「それって何時まで?ねえ、何時まで居たら帰れるの?貴方」
「・・いや・それは分からん」
「でしょう!そんな事、無理だわ・・嫌よ、いやっ!」
妻三重の激しい抵抗に合って、しばらくは単身赴任を余儀なくされた安藤だった。独身の須崎には、実はそんな安藤の状況を思いやる余裕など無かった。それは当然であろうし、そんな個人の家庭を優先して、営業部員など勤まらないのである。家庭の事は家庭で解決するしか無い。須崎にそこまで望む事は筋違いであろう。
その安藤が、単身赴任を余儀なくされて根室営業所に赴任して来たのは、既に秋深くなってからだった。その東京では考えられない冷え込みが、彼を震わせた。何時帰れるのか、或いは帰れないかも知れない。須崎とは確かに気が合うし、友人だと思ってはいるが、この抜擢は必ずしも彼は喜んでは居なかったのである。寮での紹介は終わり、形的に、木下は退社する。挨拶も済ませた。既に役員会は、2日後に迫っていたのであった。




