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帰郷
「あれだな・・須崎は、どう言う経路か分らないが、上手く黒田常務に取り入ったんだろう。こうなると、君成社長ラインとしては警戒しなきゃな・・」
屋鍋は言うが、仁科は少し首を傾げた。
「須崎はそんな権謀術数の使える男じゃ無かったと思いましたが・・」
「分からんさ・・追い詰められた男は何をするかも計り知れない。窮鼠猫を噛むの言葉もある・・ただ、これ以上彼がのさばらないように、色々情報を仕入れて置かなきゃ・・根室営業所の進藤君に、逐一情報を入れて貰うよ・・」
社内の動きが活発になった。須崎はそう言う権謀術数を使える男では勿論無い。これは、黒田―木下ラインが既に動いている事を意味していた。もう改革が始まっていたのである。木下からも、動き始めた強力な者が居ると聞いていた。それがはっきり黒田常務だと須崎は、思いっきりやってくれの言葉で確信したのだ。




