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少女と鳩
そんな須崎が、再び少女と出会ったのは、大きな道内の食イベントに出席中の事だった。
少女は、祖父らしい白髪頭の老人と一緒で、各店のブースを見回っていた。その様子を眺めるでは無いが、須崎の目に入ったのは、老人がブースの側に行くと、どの者も最敬礼をして迎える事だった。
隣でブースを手伝っていた、甲斐に訊ねた。
「なあ、あのじいさんだけど、何で皆ぺこぺこしてんの?」
甲斐が不信顔で須崎を見る・・
「ああ!副所長、何はんかくさい事言ってるんですかあ!」
それは、ニュアンスから言っても甲斐の態度から言っても、多分須崎は、今更何を聞いてるんだ?この人は?って事だろう・・。
「はんかくさいって・・あのじいさんは有名な人って事で、俺が知らないってのが恥的な?」
「そう!そうっすよ。この根室漁業組合の組合長で、北海道漁連の副理事長の佐伯道一さんじゃ無いっすか。ああ、良かった、こっちのブース来られて副所長がぼおっとしてたら、なまらかちゃっぺないと思われるっすよ」
「ああ・・そうなんだ。それは有り難う」