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帰郷
「どうした?須崎君、もう根室営業所を姥捨て山なんて言わせないぞって言う君の気概と、手腕を発揮してくれよ、遠慮は要らない。そのつもりで抜擢したんだからね、君を」
「はい!」
須崎の顔はもう明るくなっていた。こんな強権さえ与えられた期待感を感じたからである。むしろ、須崎は、下でがんがんやるよりもボクシング部長をやっていた大学時代のように、下の者を引っ張るような性格であり、その方が力を発揮出来る男であった。
黒田常務室を出て、営業部の屋鍋に挨拶に行った。仁科も同席した。微妙な変化だが、仁科は末席に座った。
「今日戻るのか?根室へ」
屋鍋は言う。
「ええ。今大改革を命じられました。根室営業所の」
仁科の顔がぴくっとなった。どう言う事なんだ?と思っている。
「ほう・・黒田常務は須崎君にかなり期待されているんだね。是非頑張ってくれよ」
「はい、今後は根室営業所からの他営業所への人事異動もあると言われましたよ、常務に」
「え・・?」




