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帰郷
しかし、有能な木下をそこに派遣している限り、これ以上佐伯との関係が悪化する事無く守られると思っていたし、営業成績など全くここへは求めて居なかったのだが、屋鍋を中心する営業部が、強くノルマを言い出し、自分にアピールしてくるものだから、今回GOを出した案件が、逆に思わぬ方向となったのである。
だが・・この君成社長は、やはりボンボンで、何もそんな動きにそれ以上気に留める事も無かった。
この晩、須崎と、受付嬢の三鍋が都内で合っていた。実はこの二人は以前から付き合っていた恋人同士であった。
「驚いちゃった・・頑張ったのね、須崎さん」
「いや・・俺全然頑張って無い・・はは」
「きゃは・・だって2倍の売上達成なんて、大騒ぎしてるわよ、本社では」
「それがさあ・・姥捨て山で全くやる気も気力も無い営業部で、そんな事は百も承知で飛ばされている俺だし、実際10%売上UPの司令が来るまでは、お日様西々だったよ。ここで骨を埋めるのかと暗い気持ちだった」
三鍋の顔が少し変化した。笑顔が消えたのだ。




