帰郷
仁科には、そう言う事は思いつかない様子。ただただ、須崎が嫌いで悉く牙を剥いてくる彼を、屋鍋にご注進して追い出しただけであった。屋鍋は違う。この須崎は有能で、何時自分の地位を脅かす存在になるかも知れないと、策略を弄して彼を追い出したのだ。君成社長がそんな細かい人事までタッチしていない事を逆手にとってであるが、確かに屋鍋から、須崎は駄目だとの話は聞いていたので、異動には何等異論も無かったのだ。社長室では、会議に出席しなかった瀬田専務と君成社長が、話をしていた。瀬田専務は、管理部門を統べる長であり、人畜無害と言われる人物。だから君成社長にとっては、非常に扱い易かった。
「意外だね、根室に飛ばされた須崎君を黒田常務が抜擢するとは」
「しかし、倍の売上達成は、これは実績として文句のつけようも無く、半年後までその受注はあると言う事じゃないですか、それは表彰に値するでしょう?」
「ああ・・うん。しかし、何で・・」
君成社長は、自分がトラブルを起した、第二福栄丸の事を知っている。かなり後の対処もまずかったなと思っている。しかし、自分がREC㈱の代表取締役社長である自負が、頭を下げさせなった。その結果、佐伯との関係が悪くなり、根室営業所は、REC㈱のドル箱では無くなってしまった事を分かっている。




