帰郷
「超・・ミラクルよねえ・・」
「そうよね、何でかしら・・」
彼女達にも、その人事の内容までは分からなかった。
屋鍋が不機嫌そうな顔で営業部に戻って来た。そして直属の第一部営業課長仁科を呼ぶ。所謂、このラインがREC㈱での出世コースと言われている。だから、まさか姥捨て山の根室営業所から、3階級特進の営業部長補佐など有り得ないのである。それもラインの違う黒田常務直属の人事・折衝部であり、社長でもなかなか口の出せない部門であるからだ。
「いきなりだよ・・この須崎君特進は」
「驚きましたよ、屋鍋部長」
「ああ・・木下さんが7月で退社される事は聞こえて来たが、彼が定年まで根室営業所長で終わると見てたからね」
「須崎君って言えなくなりました」
そう言う仁科に呆れた顔をしながら、屋鍋は、
「仁科君の思考はその程度なのか?ははあ、君が追い出したからね、彼を。つまり、個人的感情だろうが、彼は、営業マンとしては無派閥で、私にも何度も突っかかって来たが、有能な奴には間違い無いよ。だが、そんな事より、これは何か動きがあると思えないか?おかしいだろう?彼が飛ばされて、たった2ヶ月ちょっと前の話だからね」
「はあ・・」




