少女と鳩
自分と年の近い、秋川、甲斐と短い会話を交わしながら、どの人物も山岡以下覇気の無い、木下の下でただ毎日が過ぎれば良いだけの人間に映った。それは、この営業所が所属する会社の掃き溜めと言われる所以もあり、ここから出世を望むべきものは皆無・・それがそうさせている。
須崎はこれまでの肩書きから、営業所副所長として任命を受けたが、彼自身、もうここに至っては、いずれ退職するであろう、木下の代わりに所長になるだけ。先を越されてしまった進藤にしても、須崎に敵愾心を向ける事も全く無く、それまでの自分の業務を遂行するだけであった。
そして、約1ヶ月が過ぎて行く。ある程度北海道営業所の取引先、担当のエリア、人間関係、ライバル社などの動きも把握出来て行く。木下営業所長の指示と言うか方針は、無理に競合するな、今までの得意先を守って行け。敢えて価格破壊による戦争をしない暗黙の了解がある故に、それぞれライバル各社は自分の分を守りやって来れたのだ・・と。
須崎は、何となく営業所の雰囲気と言い、置かれた状況を納得した。ここでどう踏ん張ったとしても、栄転など望めぬ以上、自分から動かぬ方が最良と言う保身が働くのは必然だった。