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帰郷
須崎は、突然東京本社に呼ばれていた。現営業部長屋鍋の磯巾着と言われるゴマスリ課長、自分の直接の上司だった仁科と、いきなり本社玄関前で顔を合わせた。
「お・・戻ったのか、須崎君」
意外そうな顔で仁科は言う。その前にまずは朝の挨拶、お早うだろうが・・須崎は思った。
「お早う御座います!」
周囲に聞こえるように大きな声で須崎は、わざと挨拶をする。
「お・・お早う」
周囲がくすくす笑っていた。仁科と須崎の相性の悪さは、社内中に知れ渡っているからだが、受付嬢の三鍋美弥が、須崎に笑顔を見せる。須崎は少し目配せをした。それがどう言う合図なのかは知らないが、清潔感ある、ショートの髪の美人であった。
本社の会議室にすぐ通されると、こちらも徹底的にやりあっていた、ゴマスリ課長の屋鍋が部長に昇進して、座っていた。苦虫を噛み潰している顔は相変わらずで、
「よう、須崎君、久し振りだよなあ・・」
ぺこっと頭を下げながら、朝からいきなり嫌な奴(上司)の顔ばかり見ると、須崎は憂鬱な気持ちになっていた。




