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変化
「何か言いたそうだね。聞きたいのか?何か」
「そうです。佐伯氏と会いました」
「・・それで?」
「来月から、取扱量を倍にしてくれるそうです」
「急に?」
「そうです。急にです。おかしいと思いませんか?所長」
木下は、平然と
「ちっとも。今年はニシンが豊漁だ。当社で扱う数の子は、殆どロシアからの輸入品。つまり、漁協としてはその豊漁分を、加工設備のある当社に回して来て不思議な事では無い。何か?君自身が営業活動した結果だとでも言いたいのかね?」
予想外に厳しい言葉であった。
「あ・・いえ・・自分は何も・・突然あちらから申し出られた事ですから、その・・」
くくく・・木下は笑った。
「良い良い・・ある程度君は知ってしまった訳だ。察するに、少し事情をもう少し君と話をすべきだね。今晩【菊野】に行こう。その前に、会議の資料だと、所員に配ってくれよ。あ・・昼間も一緒に少し出かけようか」
「は・・い」




