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変化
須崎は首を黙って振る以外、何も考えられなかった。一連の事を矢継ぎ早に告げられて、そして、自分は一体どうしてこの人達と関わりを持ち、そして会社の急激な波乱さえも甘受しなければならないのか。そして、自分に何を求められ、且つ訳の分からぬ任務を遂行せねばならぬのか・・
最期に少し須崎は冷静になって、若菜の事を聞いた。
「あの・・もしかしてあの娘さんの人嫌いと、抱いていた鳩は・・」
菊野の顔が歪んだ。その両目からは、ぽろぽろと涙が毀れたのである。須崎ははっとした。
「あの娘・・今中学1年だけど、漁に出る父親と母親が何時も鳩を連れて行くの。そして、若菜ちゃんに手紙を書くのよ。でも・・あの日の手紙は、しばらく日本に帰れないって事だった。未だ親の庇護を必要とする多感な小学生。あの娘は両親の拿捕後、学校でもかなりいじめに合っていたようだし、私が何度若菜ちゃんの所に行こうとしたか・・」




