最終章 夢に
「おう!先頭を飛び帰っとるんは、北竜号じゃの!一際大きな羽ばたきをしとる。凛々しいのう・・大きな鳩じゃのう・・」
妻鳥の言葉に、はらはらと若菜は涙を溢した。美弥が、そっと若菜の肩を抱いた。ここまで様々な事、出会い、葛藤があった。そして、その精神力の強さ、がまん強さで、自分の眠っていた才能を常に押さえて来た若菜。それが、精神を圧迫した。決して、若菜一人では解決する事など無かっただろう。そして北竜号はそのまま種鳩として佐伯鳩舎で生を閉じたに違い無い。
美弥は、若菜にこう言った。
「若菜ちゃん、変えるのよ、この競翔と言うシステムを・そして、新で真なる鳩達がこれからも磨かれていくようにしないといけない」
「はい・・私ね、美弥お姉ちゃん、最近、良くメールや、インターネット電話で、優君や、麗華ちゃんと交信してるの」
「うん」
「それでね、故沢木 純が何故天才だと、香月博士達や、周囲に称されたか、その自然的な人との接し方や、競翔も勿論含めて、心温かい人だったかも分かった。優君は、話も出来なかった祖父の事に今一生懸命・・これは、どんな書物を持ってしても、人物像を自分は探りたいと、日記、今までの交流をまとめているわ」




